生徒会の優子
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月曜日は昼に体育の授業がある。もうこんなに暑いのに、生徒を炎天下で走らせようなんてどうかしている。端的に言って頭が。金子が「今日のウォーミングアップは二周!」と言った。
「姫は偉いな~」と気だるげなコトは、今日も見学だ。そんなに見学ばっかりじゃ単位貰えないよ、と最初は私も言ってみたけど、貰えなければ貰えないでいいんだそうだ。コトのそういうところは強いなぁと秘かに尊敬する。
グラウンドを二周も走れば、私は当然のように呼吸困難に陥る。上手く息ができない。体育教師は自分が運動できるからって、人間誰でも走れると思い込んでいるんだ。おこがましい。
「サキ大丈夫?」
マカナが心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
「ゆっくり走ってもいいんじゃない?」とマカナは言ってくれるが、ダチョウのような俊足を持った人に私の気持ちは分からない。みんなが走り終わって待ってる所に一人ゴールなんて、絶対嫌。
ところで、クラス一の俊足の持ち主にも苦手なものはある。マカナはボールを遠くに投げられない。天は二物を与えずという言葉は信用に値しないが、偶然当たることもあるようだ。きっとこの言葉は私みたいな愚鈍が作ったんだろう。私のボールはマカナのよりさらに手前に落ちるけど、マカナも完璧じゃないと思うと何となく許せる気がする。何でもできる優等生アカリがどちらも好記録だけど、それはまた別の世界の話。
不意に暗くなり、思わず空を見上げた。雲が太陽の前を横切っている。ふと、副会長候補の優子と仲良くなっておこうと思い立って、彼女を捕まえた。でも、勉強か読書してる姿しか知らない人に何を話しかけようか思い付かず、「雲は自由だと思う?」と、よく分からないことを聞いた。それでも優子は冷静で、「風に流されているから自由ではないんじゃないかしら」と、夢のない回答。「それに、雲は水の粒だから」だって。えらく現実的だ。
せっかくだから、同じ質問をコトにも投げかけてみる。私が「空を自由に泳いで、楽しそうじゃん」と言うと、コトは「あんな高い所に拘束されて、降りて来られないんだよ。可哀想に」と雲を見上げた。二人の性格がよく表れているなと、私は少し可笑しくなった。優子のことをもっと知らないと。そうだ。後で、演説の内容について相談してみよう。優子が前に言ってた「透明化」と私が考えた「自由化」だけじゃ物足りない。
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