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放課後、私とコトと優子は、生徒会室にいた。気が付けば、生徒会長選挙まであと二日に迫っている。
「学校に自由を――諸規則の撤廃を目指します。ってのはどう?」と、私は自分が考えたスローガンを披露する。すかさずコトが「いいね~」と賛同を示した。
無言で優子を見つめる。プレッシャーを感じ取ったのか、優子も口を開く。
「諸規則というのが具体的に何のことを言っているのか、ちょっと分かりにくくないですか」
「あ、それママにも言われた! 具体的に、って」
私は予期せぬ一致にささやかな感動を覚えつつ、「髪の色の自由化!」と、ママに言ったことを繰り返す。
今度は優子が無言で私を見つめた。顔が「それから?」と、続きを促している。
「……」
しかし、私は何も答えられなかった。
「それだけでは少し弱くないですか」
「そうだね。じゃあ他にも考えよう、マニュフェスト。何にする?」と笑いながら、内心は「浅薄さを一瞬で看破された!」という動揺が止まらない。優子はさすがだ。
そして優子は「大衆迎合的なのはどうですか。最近流行ってるじゃないですか」と言って顎をさすった。ワタルみたいなことを言うなぁ。私が「迎合的?」と聞き返すと「おもねる感じっていうか」と言葉の意味を説明してくれる。余計分かんないよ。
スマホに打つと「阿る」。漢字は「阿鼻叫喚」で見たことあるやつだ。意味は「人の気に入るように振る舞う」とある。要するにゴマすって媚びを売る感じね。
なんてやってる間に、コトが「お金配るのどう~?」と提案してきた。すかさず私は「いいね!」と賛同を示した。「お金ほしい!」
というわけで、明後日の生徒会長選挙、私たちは三本柱の方針で戦うことになった。
「その一、文化祭のクラス予算を一律五千円引き上げます」とコトが宣言する。
「その二、生徒会執行部の活動を透明化します」と発案者の優子が言う。
「その三、髪の色などの諸規則を撤廃し、学校を自由にします!」と私は勢いよく立ち上がった。演説は全部私がやるんだけど、三人が一つずつ出し合った案がマニュフェストなんて、ちょっと素敵だと思わない?
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