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「反省してるか」と聞かれると、嘘がつけない私は「反省してます」とは答えられなかった。何も答えずにいると、「反省しなきゃダメだよ」と、八木は腕を組んで背もたれに寄り掛かる。さて困った。どうやら私は反省しなければならないらしい。というか、反省しているように八木に見せなければならない。
でも、その前にどうしても気になったので、一つ質問する。
「私が反省したとかしてないとか、どうやって見極めるんですか」
「そんなの見れば分かるよ」
「尊大ですね」と口から出かかったけど、ぎりぎりの所で飲み込んだ。でも、人の心の内を見れば分かるなんて、どう考えても尊大じゃない?
さて、今の私には選択肢が三つある。
一つ目は、反省した振りをすること。演技力を必要とするのが難点で、私の乏しい演技では八木の目をごまかせないかもしれない。嘘が見破られたらそれもまた面倒になる。
二つ目は、反省しろという八木の主張に真っ向から反論すること。八木も三回遅刻したくらいで大袈裟だと思う。ただし、八木が上げた拳を簡単に引っ込めるとも思えない。
私は最後の三つ目を選ぶことにした。
「すみませんでした」
謝ればいいんでしょ、という不遜な聞こえ方をしたのか、八木は私の謝罪を受け入れようとしなかった。「本当に反省してるの?」としつこい。それでも私はただひたすら「すみませんでした」を繰り返す。
「もう遅刻しない?」
「すみませんでした」
「このままじゃ本当にまずいよ」
「すみませんでした」
八木は呆れたように「もうこれが最後だからね」と、よく分からない最後通告をしてきた。私は素っ気なく「すみませんでした」と答えただけだった。それ以上の追及は無かった。
私が思うに、八木は初めから、私の遅刻が治るとも、まして自身の説教の力で治せるとも思ってない。三回以上遅刻したから指導しなければならなくなっただけなのだ。だから、私が頑なな態度を見せると、「警告はしたぞ」ということであっさり手を引いたんだろう。
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