24
この日の放課後、私は八木に呼び出された。職員室に行くと、片隅の椅子に座らされる。
「何で呼ばれたか分かる?」
八木はどうしてそんな回りくどい言い方をするんだろう。呼んでおいて「理由が分かるか」なんて。すぐ言えばいいのに。エクステも、ハチマキさえつけてないし、私は素直に「分かりません、私と話したかったからですか」と答えた。
「まぁそうだね。えーと、今日はどうして遅刻したの?」
「それは私が今ここに呼ばれていることと関係がありますか」
「そうだとも。五月に入って何回遅刻してる?」
「数えてません」
「今日を入れてもう三回だよ」
「そうですか」
言いたいことがあるならもっとパッと言えよ、と思う。耐えきれなくなった私は「遅刻を怒りたいんですか」と聞いた。
「えー、怒りたいわけじゃないんだけどね、三回は多くない?」
「そうですか?」
「多いよ」
「そうですか」
「どうして遅刻するの?」
八木はこの会話をどこへ持って行きたいんだろう。私には着地点が見えなかった。
「モチベーションが上がらないっていうか、そんな感じです」
「そんな言い訳は通用しないよ」
私は正直に自分の気持ちを答えたつもりだったけど、それは「言い訳」らしい。どうやら、八木を満足させることを言わなければならないようだ。
少し考えてから、「起きるのが遅かったんです。明日からは少し早く起きるようにします」と言ってみた。八木は十秒くらい何も言わなかった。
そこで、もう言いたいことは言い終わったんだろうと判断して、「帰っていいですか」と聞く。これにもすぐには反応が無かったので、私は立ち上がろうと椅子に手をかけた。
「ちょっと待って。ちゃんと反省してるの?」
八木の語気がやや強まったのが分かった。
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