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 この日の放課後、私は八木に呼び出された。職員室に行くと、片隅の椅子に座らされる。

「何で呼ばれたか分かる?」

 八木はどうしてそんな回りくどい言い方をするんだろう。呼んでおいて「理由が分かるか」なんて。すぐ言えばいいのに。エクステも、ハチマキさえつけてないし、私は素直に「分かりません、私と話したかったからですか」と答えた。

「まぁそうだね。えーと、今日はどうして遅刻したの?」

「それは私が今ここに呼ばれていることと関係がありますか」

「そうだとも。五月に入って何回遅刻してる?」

「数えてません」

「今日を入れてもう三回だよ」

「そうですか」

 言いたいことがあるならもっとパッと言えよ、と思う。耐えきれなくなった私は「遅刻を怒りたいんですか」と聞いた。

「えー、怒りたいわけじゃないんだけどね、三回は多くない?」

「そうですか?」

「多いよ」

「そうですか」

「どうして遅刻するの?」

 八木はこの会話をどこへ持って行きたいんだろう。私には着地点が見えなかった。

「モチベーションが上がらないっていうか、そんな感じです」

「そんな言い訳は通用しないよ」

 私は正直に自分の気持ちを答えたつもりだったけど、それは「言い訳」らしい。どうやら、八木を満足させることを言わなければならないようだ。


 少し考えてから、「起きるのが遅かったんです。明日からは少し早く起きるようにします」と言ってみた。八木は十秒くらい何も言わなかった。

 そこで、もう言いたいことは言い終わったんだろうと判断して、「帰っていいですか」と聞く。これにもすぐには反応が無かったので、私は立ち上がろうと椅子に手をかけた。

「ちょっと待って。ちゃんと反省してるの?」

 八木の語気がやや強まったのが分かった。

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