担任の八木
23
運動会があんなに楽しかったのに、何もしなくても時間は過ぎ去っていく。少し前に生徒大会とかいうよく分からないイベントもあったけど、ミッキー先輩の司会がうまいなぁと思っているうちに終わった。
「また運動会やりたいな~」
五月晴れの空を見上げながら、コトが呟く。確かに今日も運動会日和だ。
私は「コト全然参加してなかったじゃん」と反論する。足を怪我したとか何とか言ってずっと座ってたし、放送席で昼寝していた姿もばっちり見たぞ。
それでもコトは「テントの下で、色んな人が走り回ってるの見るのが楽しいんだよ~」と、窓の外を見下ろした。
「そうだ!」
何か思い付いた時って、自分は天才なんじゃないかと思う。
「文化祭で何か面白いことやろうよ!」
私はキラキラした顔で上半身ごとコトの方を向いたが、「文化祭は演劇でしょ~?」といなされた。この間のホームルームで、A組はクラス演劇をやることに決まっていた。
「だから、クラスじゃなくて、部活とか、有志とかでさ!」
「なるほど~」と言うコトの口角が上がったように見えたので、私は具体的にアイディアを出していく。
「ミスコン! ミスコンよくない?」
「ん~」
「だめ? じゃあ芸人呼んでお笑いライブ!」
「ん~」
「じゃあコトは何がいいの?」
「宝くじ」
「宝くじ?」
私は思わず聞き返してしまった。それのどこが面白いんだろう。
「宝くじを売って、抽選会して、それで大儲け」
コトが「大儲け」のところでにんまりした。それから悪戯っぽくケケケと笑う。
せっかく高校生になったんだから、もっと楽しまないと負けだ。そう結論付けてこの日の昼休みは終了した。運動会だけがイベントじゃない。
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