姫に翼を
山田(真)
姫に翼を
入学式
1
校長の話ってなんでこんなにつまんないんだろう。入学早々気分は最悪。誰でもいいから、誰か話が面白い校長を知ってたら、うちのと交換してほしい。
中学の先生に勧められるままに「西新」を受験した。昨年度の東大合格者数二名! という、なんとも中途半端な進学校だ。東大二人って、たまたま優秀な双子がいただけじゃない? という気がする。
定型文を繋げたような話を聞き流しながら、同じクラスになる人たちの顔を見回してみる。残念ながらイケメンも美女もいないかな? ついでに野獣もいないみたい。目に入るのは子どもっぽい丸顔ばっかり。私も人のこと言えないんだけど。
横に居並ぶ先生たちも順にチェック! こっちもパッとしない。というか、おじさん率の高さに驚かされる。左端から、おじさん、おじさん、おじさん。おばさんを挟んでまたおじさんだ。
そうしている内に、平らな顔のおじさんと目が合った。
「こんにちはー」と心の中で律義に挨拶する偉い私。
平らな顔は左手の人差し指をくいっと動かして、「前を見ろ」というジェスチャーをしてきた。おじさんとにらめっこをしても仕方ないので、壇上を見上げる。校長が微動だにせず式辞を読み上げる。やっと終わりそうだ。
その後も何回か立ったり座ったりを繰り返しているうちに、入学式は終わった。
こういう場で話す人は、もうちょっと話し方を工夫すべきだと思う。何百人もの人がその話を聞くために座ってるんだから、飽きさせないように話す責任があるはずだ。せめて抑揚くらいつけてほしい。
体育館を出ながら後ろの人にそう言ったけど、真面目な顔で流された。彼はきっとトーテムポールなんだろう。
「あとさ、最後に、って言ってからダラダラと話すの、ずるくない?」
「……」
こっちが話しかけてんだから返事くらいしろよ。
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