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「学校に自由を――諸規則を撤廃する! これが私のスローガンです。具体的な取り組みとして、まずは試験前の部活を自由にします! 試験前の部活禁止期間は撤廃します!」

 拍手喝采。

「次に、下校時間を二時間延長して七時にします!」

 同じ層からまた喝采。もっと部活をやりたい人たちだ。

「そして、髪の色を自由にします! 染めるの禁止規則を撤廃します!」

 この話題だけは拍手がまばらだったので畳みかける。

「この、グローバル化の時代に、多様化の、ダイバーシティの時代に」と、覚えたての言葉を並べ、「一律に髪を黒に強制するのは時代錯誤です!」と言い切った。さらに捲くし立てる。

「アメリカかどこかの、偉いIT社長も言ってるでしょ? 多様性は当社の強みだよって。『西新』は『世界で活躍するリーダーの育成』を謳ってるんだから、それにほら」

 私は思い付くままに予定になかったことを喋る。

「パラリンピックの時もそうだったでしょ? 多様な人が創る共生社会、だっけ?」

 少しグダってきたので、「つまりそういうこと! 一緒に学校を自由にしましょう!」と言ってこの話は終わりにした。


 この後も私の演説は続いたが、文化祭のクラス費増額はやっぱり受けがよかった。そして、いよいよ私の最大の願望をぶちまける。

「私たち生徒会本部は、生徒会の活動を内外にアピールするため、今年の文化祭のステージ企画に参加します!」

「ミスコン」とは敢えて言わなかった。ステージ企画参加は「生徒会活動の透明化」の一環ということになっているからだ。「ミスコン」と言ってしまうと「透明化」と関係ないように見えてしまう。ちなみに、演説の台詞の「ステージ企画を通じて生徒会に興味を持ってもらうことが、透明化への第一歩です!」という何とも色っぽいこじつけは、優子の発案だ。

 そして演説の終わりにこれを言う。

「私は現会長、齋藤先輩の正統な後継者です! つまり、齋藤先輩は私を次の会長にしたいと思ってるってことです!」

 主に三年生から拍手が起こって、囃し立てるような口笛が聞こえた。齋藤先輩は三年の間では絶対的な支持を集めている。


 もう自分が何を喋ってるのかさえよく分からないくらいに高揚してたけど、最高に楽しい時間だった。高校に入って一番楽しかったかもしれない。私は、やり切った感に包まれていた。

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