放送部の先輩

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 放課後、昇降口に行こうと階段を下りていた時、廊下を歩いていく美人に目が留まった。上履きの赤いラインは三年生の証だ。気付いた時には駆け寄って「先輩!」と話しかけていた。

 小顔で背が高くて、振り返った顔は立体的な造形。そして、全てを見透かすような色の薄い目をしていた。

「先輩美人ですね!」

「あら、ありがとう。あなたも可愛いわよ」と、戸惑いながらも放送室と書かれた部屋に入ろうとする。私はこの機を逃すまいと「放送部なんですか」と食い下がる。

「えぇ。それより、お友達が待っているみたいよ」

 コトが柱の陰からこちらを見ていた。そうだ、コトを置いてきぼりにして先輩を追いかけたんだった。

「ありがとうございました!」

 とりあえずお礼を述べて、コトの所に戻る。それから、「入る部活決まった!」と報告した。こんなに美人がいるなら、放送部に入らない理由がない!


 駅への帰り道、コトと寄り道をすることにした。話題のサンドウィッチ店ができたからだ。コトは渋ったが、最後には折れてくれた。

 一番ベーシックなサンドウィッチと、セットのジュースを持って二階に上がる。窓際に並んで座ると、眼下を色んな人が行き来していた。

「コトは入る部活決めた?」

「うん」

「え、どこ入るの?」

「帰宅部」

「つまり、どこにも入らないってこと?」

「そうとも言うかも~」

「じゃあ一緒に放送部入ろうよ!」

「いいよ~」

 コトはびっくりするほどあっさり了承した。部活ってこんな簡単に決めていいんだっけ? まぁ入っても嫌なら辞めればいいんだから、そんなに悩む理由も必要も無いか。

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