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「渡邊ララって人を探しに来ました。ダンス部だって聞いたので」
私は正直にそう答えた。しかし彼女は気に入らないことでもあるのか、「だから何の用?」と冷たい。
仕方なく私は「文化祭実行委員会の会長さんとお話ししたいことがあって――」と続けるが、それも遮られた。
「見ての通り部活中だから、また今度にしてくれる?」
彼女の大きな目が一段と大きくなり、すごい目力だ。私もせっかくここまで来て簡単には帰りたくない。「渡邊ララって人を二分貸してくれるだけでいいんだけど」と食い下がる。すると、彼女は意外なことを言った。
「ならもう貸したから帰って」
この時私はようやく理解した。この人が渡邊ララだ。名前が名前だからソフィー先輩みたいなのを勝手に想像してたけど、思い込みは怖い。可愛い男の子みたいな人だとは思わなかった。
渡邊ララは「音漏れるからどいてくれる?」と私を体育館の外に追い出すと、ぴしゃりとドアを閉めた。明日は土曜日。お休みだ。
月曜日、マカナに聞くと今日もダンス部は踊るらしい。渡邊ララに会いたければ、昼休みに突撃するしかない。
他学年のフロアっていうのは雰囲気が違う。知ってる人がいないとかそういうことじゃなくて、何か「色」が違うような感覚だ。私はE組まで来ると、前のドアを大きく開けた。人が多い。私は渡邊ララのショートヘアをすぐには見つけられなかった。
「渡邊ララさんはいませんかー」と大きな声で二回言うと、窓際で談笑していた彼女がスッと立ち上がった。それからサッと真顔になり、大股で目の前まで来て言う。
「何の用?」
その瞬間、クラスの注目が一気に集まったのを感じた。
「二次企画書を提出しに来ました」
私は家で書いておいた二次企画書を、捜査令状のように彼女の前に掲げた。使用希望場所は体育館のステージと書いてある。しかし、渡邊ララは受け取ってくれなかった。
「二次企画書は先週の委員会が締め切りだったはず。締め切りを過ぎたものは一切受け取らないことにしてるの。残念だけど」
完全アウェーの教室で、渡邊ララとの攻防が始まった。
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