19
「どうしてマニキュアはいいのに髪はダメなんですか」
私はルールの矛盾を突こうとしたが、則本はそれさえも想定内という表情で受け止めた。
「その話の前に、私が今言ったことは理解して受け入れるのですか。返事を貰っていません」
「エクステを外せばいいんでしょ」
「では今すぐに外しなさい」
仕方ない。私は外したエクステを鞄にしまう。
「では話を戻しますが、私はマニュキュアも禁止すべきだと思っています。まだ校長の承諾が無いので見逃しているに過ぎません」
この則本という男がいる限り、学校はどんどん不自由になってしまう。私は底知れない危機感を覚えた。そして最後の悪あがきに出る。
「そもそも、何で染めちゃいけないんですか。髪を染めて学校での学びに支障があるとは思えません。スポーツ選手でも染めてる人は沢山いるし、実際染めてもいい高校もあるじゃないですか」
「染髪を禁止していない学校があることは認識しています。もちろん、本校のように禁止している学校も沢山あります。それぞれの学校の実態や指導方針によって、各学校の規則が作られているからです。ただ、本校では禁止しているということです。あなたは本校の生徒ですから、本校の規則に従ってください」
私はもう反論するのをやめた。粘っても、最後には「私がルールです。それに従いなさい」と言われるだけだろう。こういう男とやりあっても時間の無駄だ。
「先生が言うことはよく分かりました。もう帰ってもいいですか」と私が言うと、則本は「最後に一つだけ。生徒会本部に入ることを勧めます」と、唐突に言ってきた。「あなたが言うように、本校の規則が適切かどうかという観点は大事です。しかし、それをあなた一人が言ってもただの我儘です。そのことについて本当に学校と議論したければ、生徒会として団体交渉してください」
「それだけですか」
「それだけです。終わりますので退室してください」
お前に言われなくても出ていくってば。いちいちうるさい奴だ。
次の日から、体育の授業は赤いハチマキをリボンみたいに髪に結んで出ることにした。運動会当日に認められるものを練習で禁止にできるはずはない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます