★★★ Excellent!!!
「大人」にこそ読んでもらいたい、これこそが『教育』だ。 灰槻
ゲーム感想文、などというありそうで無かった不思議な課題を出された勇斗は、塾を通じて「文章」を学んでいく事になる……
と、そんな感じのストーリーのこの作品。
しかし本当に着目すべきは、ストーリーの裏側に隠された様々な知識です。
この作品は、中学生の課題をテーマにしていながらも、こうして文章を書く事に対しての基本をしっかりと押さえ、論理化して『教え』てくれます。
そして、確かな現実の非情さも鮮明に描き出されています。先生の人間性、経営と教育という二つの相いれない立場の相克、学習という行為の本質。誰もが本能的に目を背けている人間の業を、如実に描き出す事にも成功しているのです。
さらに、中学生の心理が詳細に語られているのも評価すべき点です。
大人になるにつれて、人間は過去の事を思い出に変え、その時の感覚を失ってしまいます。「相手の立場になって考える」というのは、世代が異なると非常に難しい。それ故に、教育には数多の失敗例が積み重なるのです。
そんな中、現代の中学生の心理を文章として表現し、形に残しているこの作品は、確実に「大人」に『子供』の理解を深める手掛かりとなると、僕は断言します。
その全てが、確かな文章力で纏められ、ストレスなく読破する事が可能なこの作品。
一度でいいから、眼を通してもらいたいですね。