ストーリーの進行と並列で言語・文法への考察という今まで聞いたこともない要素で構成された小説。
ただ世界観情報が滲み出てくるのが遅く感じてしまいます。真面目にこの架空の言語に入り込んでしまって、そっちに頭が入ってしまうのです。もしかして読むのにIQフィルターが掛かっているのかしら。読む人を選ぶとか。
面白そうな世界観とストーリーをもっと素直に楽しみたいなぁ。
ただ皆さんに伝えたい。この物語のリアルは既存の異世界モンを根底から覆すくらいの価値があると思います。だからこそ作者の頭の中に住む登場人物たちをもっと生身の人として読めたらと願います。
ここに出てくる異世界語をカタカナ表記にしたシンプルなものではダメなんでしょうか?それでも作品の価値は変わらないと思うのですが。
「言葉が通じない」
それでも大概の作品は、相手が(心の中で)日本語を使っているため、読者が不自由することはありません。しかしこの作品は「読者自身も分からない謎の言語」が登場します。そして、これを作中の主人公と共に「解読」していかなければならないのです。
江戸時代の医学書「解体新書」の翻訳では「フルヘッヘンド=うず高い」という有名な翻訳がありますが、翻訳者である杉田玄白や前野良沢等もおそらく、この主人公と同じ感覚だったのではないでしょうか。
あるいは作中では主人公が発音をしっかりと聞き取れており、それを基に「謎解き」をする場面は、幕末の中浜万次郎(ジョン万次郎)が英語を取得したような感覚だったのかもしれません。
彼等、先人達の苦労を描写したような内容は、旧来の冒険もの、あるいは異世界ものとは明らかに一線を画しています。
とにかく「発想がすごい」。その一言に尽きるといってよいでしょう
異世界無双という言葉が流行りましたが、これは異世界苦労。
言葉が通じないという段階で、かなりの苦労話。
しかしながら、かつての日本の田舎に外国船が漂流したときのように、あるいはアメリカ大陸の人々がコロンブスたちを発見したときのように。
いつかは言葉が通じるはず……なのです。
文系を下に見る風潮がありますが、たった一人で言葉の通じない世界に放り込まれたら、言語学に明るいほうが有利でしょう。(もちろんよくわからないけどとりあえず騒ごう、が出来る人もいるかもしれませんが)
文化風俗だけではなく、言葉も違う、本当の異世界。大変知的好奇心をくすぐられます。
主人公が理解できた言葉にルビを振っていくというのも面白い試み。
この作品はなんだか「自作言語をつくったのですごい」と評価されているふしがあります。もちろんそれは「とてつもなくすごいこと」なんです。しかし、異世界を描くただの道具としてそれを見るのは間違いです。一見、現代の地球にみえても、端々から「この世界は違うよ」というのがわかります。それこそがこの話の真の意味での「凄み」なのです。傍目には現代の地球に似た価値観であっても「ずれ」があります。それがすごいのです。そして主人公は、その「ずれ」に気づきつつも、あくまで「自分は平凡な人間だ」と覚悟を決めています。この世界は一人の英雄がなにかを変えるご都合主義な世界「ではありません」。この世界にはこの世界のルールがあり、それは極めて複雑で、個人のレベルを超えています。そして主人公がそれを理解しているからこそ、まわりの人々がとても魅力的に思えます。たぶん、主人公は英雄にはなれません。でも「だからこそすごい」のです。あくまでも個人的な意見として、「これが本物のファンタジー」なのです。
世界観等はそこそこ珍しいという程度のオリジナリティで、小説として見ると、荒削りで描写不足な部分が非常に目につく作品。
しかし、その設定の奥深さは並外れていて、「異世界に行ったけど言葉が通じない!」という状況を丁寧に描写し、異世界言語を習得していく過程が書かれている。
異世界言語を実際に作ってしまう作者の熱意には感服するしかない。
あとは描写不足な点と、作中で主人公の地の文が不必要に長くテンポが悪い点さえ改善されれば、さらに高い評価になると思う。
現状では、ヒロインの背格好もわからないし、どんな家に住んでいるのか、どんな服なのか、食事はどうなのか。主人公の一人称視点の小説なのに、描写不足のために、読んでいてイメージしにくいことは問題。
言語への作者の熱意は凄まじいが、他の世界観描写へ、その十分の一でも熱意を割いて欲しい。
※一日目を読み終えた時点でのレビューです。
今まで魔法やチートやその他諸々でスルーされてきた言語問題に鋭く切り込んだだけでなく、綿密に作り上げられた架空言語と、それを一歩ずつ解読していくという途方もない事をやってのけるとは、ただただ圧倒されるばかりです。疑問に思っても普通はここまでやらないしできないです。
(ちなみにSFの分野では、言語どころか「大気組成が違うから呼吸できない」「異邦の食べ物や飲み物が主人公たちにとっては毒」「そもそも相手が人型ではない」等が当たり前だったりするので、異世界転生ものの御都合主義は言語だけに限らないのですが……。閑話休題)
そういった面に於いてはこの作品は素晴らしい物ですが、小説としての完成度は? と問われると、些か難ありと感じました。
例えば、地の文が三人称視点のはずなのに、主人公の思考や感情をシームレスに挟んでくるところは読んでいて混乱しました。「分からない事だらけの異世界を手探りで進む」という構成を考慮すると、一人称(主人公)視点で書いた方が、読み手も入り込みやすくなるのでないかと思います。
あと、文節が長く、句読点もないため「?」となる箇所もいくつか見受けられました。
これに関しては私の読解力が低いだけと言われればそれまでですが、可読性を高めることはプラスになりこそすれ、マイナスにはならないと思います。
(「改行を増やせ」「行間を多くしろ」というラノベ/Web小説特有の話ではありません)
作品のコンセプトとしては非常に面白いですし、並々ならぬ情熱を注いでいる事も十分伝わってくるので、あとは「小説」としてのブラッシュアップに期待させていただきます。
タイトルそのまま、異世界転生したのに転生した先の世界の言語が分からなくて意志疎通に四苦八苦する物語です。
創作言語の設定の細かさ、言語学習の過程の巧妙さ、作者様の言語学への知識――は本当にすごいのですが他の方のレビューにもたくさん書かれているので、私はあえて他のオススメポイントを挙げさせてください。
まず、主人公の翠がハーレムを諦めないところがすごく面白いです。
元の世界にいた時にラノベで学んだチートとハーレムを期待して、この世界で女の子たちと仲良くしようとします。
どんなに頭がよくても、どんなに困難な状況でも、翠が目指しているのはチーレム。
特にヒロインのシャリヤといちゃいちゃしたい!けどことばが分からなくてコミュニケーションが取れないから無理!という流れ、必死で勉強するモチベーションとしてすごく説得力があります。
それから、翠とシャリヤの勉強に文字数をとられるので進みが遅いと感じる方もいらっしゃるようですが、私は「異世界転生だから」で説明をばっさり切り捨てた序盤がスピーディーで読みやすかったと感じました。
話が進むにつれ、どうやらテンプレ異世界転生ではないらしいことが分かってきますが――ここから先は続きを楽しみにします。
それから、私の好みの話なのですが、今のところファンタジー特有のモンスターが出てこず、銃撃戦をする近現代の紛争をイメージした人間同士の戦いが繰り広げられているのも胸アツ!
といっても、翠は女の子たちと言語の勉強をしてばかりでまだ実戦には立っていないんですけどね!
彼もいつか銃をとって戦うのでは……!?とドキドキしています。
あとレシェールが好きです。いいやつの気がする。
(最新話・47話まで拝読してのレビューです)