先人達の苦労がひしひしと伝わってくる…

「言葉が通じない」

それでも大概の作品は、相手が(心の中で)日本語を使っているため、読者が不自由することはありません。しかしこの作品は「読者自身も分からない謎の言語」が登場します。そして、これを作中の主人公と共に「解読」していかなければならないのです。

江戸時代の医学書「解体新書」の翻訳では「フルヘッヘンド=うず高い」という有名な翻訳がありますが、翻訳者である杉田玄白や前野良沢等もおそらく、この主人公と同じ感覚だったのではないでしょうか。

あるいは作中では主人公が発音をしっかりと聞き取れており、それを基に「謎解き」をする場面は、幕末の中浜万次郎(ジョン万次郎)が英語を取得したような感覚だったのかもしれません。

彼等、先人達の苦労を描写したような内容は、旧来の冒険もの、あるいは異世界ものとは明らかに一線を画しています。

とにかく「発想がすごい」。その一言に尽きるといってよいでしょう

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