LEVEL34 / タイトルなくして感想文なし
虎ノ口中学校で「ゲーム感想文の合宿」が議題に取り上げられていた時、勇斗は学進ゼミの課題に取り組んでいた。
「勇者以外の立場で考え、文章を作成する」
それが前回、杉田が勇斗に与えた課題だ。
当初は勇者の仲間である戦士や魔法使い、といった内容で書いてみようと考えていた。しかし、
「5人以上が参加する場合、自分が「勇者の仲間に入れない」というのを想定してみろ」
合宿を想定し、追加で出された課題である。
そうなると、例えば王様。極端に言ってしまえば魔王の立場で感想文を書くというのも一つの方法だと思った。
「なんで学校で教えてくれなかったんだろうな~」
最近、勇斗がネット上で熱心に見ているのは「小説
そこには主人公が
あるいはスライムといった「
「ある意味、これが「コピペ」なのかもしれない」
もし自分が合宿で「魔王役」を引き受けるようになった場合、おそらくこういった作品が参考になる。
むろん、これらは小説であって感想文ではないから、完全にコピーすることは出来ないのかもしれない。しかし今の勇斗にはこれらが「自分の創造力を高めてくれる」格好の素材となっていた。
「もしも、自分が魔王だったら?」
魔王の立場で感想文を書くとすれば、きっとこういうタイトルで書くだろう。
と、すれば既に自分が仕上げた感想文は「理想のパーティー
「いや、待てよ……」
これまで、読書感想文に「タイトル」という考えはなかった。何故なら読書感想文のタイトルは「課題図書を読んだ感想」と決まっていると思っていたからだ。
「確かに、タイトルを書く必要はないけれど……」
でも、これって実は結構重要ではないだろうか?
確かに「タイトル名」としては書かないかもしれない。しかし、最初の1行目に自分の意見を入れる事は必要ではないか?
「杉田は何て言ってたっけ……そうだ!
つまり論理展開だ。最初に「ドラクエを魔王の視点で見た感想は~」と書く。そうすれば、魔王の立場で書いても不自然ではないだろう。
ドラクエ
↓
魔王
↓
悪
↓(なぜなら)
世界を滅ぼす
↓(そして)
勇者が戦いを挑む
↓(しかし)
戦わなくてもよいのでは?
↓(なぜなら)
勇者が魔王を倒したいとは限らない
↓(なぜなら)
王様の命令で来ただけだから
↓(だから)
勇者の気持ちを確かめればよい
構成を基に、勇斗は感想文を書き始めた。
ドラクエといえば魔王です。一般に魔王は悪の存在と思われています。
なぜなら世界、即ち人間を滅ぼす存在とされているからです。
そして、そのような存在を倒すべく、勇者が魔王の下にやってくる。敵は勇者だけではありません。戦士や魔法使いといった勇者の仲間も一緒にやってきます。
しかし、魔王は本当に勇者達と戦う必要があるでしょうか?なぜなら勇者は魔王を倒したいと考えているかどうかが不明だからです。
その理由は、勇者が「魔王を倒したい」のではなく、彼が王様から「魔王を倒して来い」と命令されたに過ぎません。
だから、もし勇者と戦うことになれば、その目的を
そして勇者の望みが魔王の
そうすれば、人間と魔王。そしてその手下であるモンスターは敵同士ではなくなるのではないでしょうか?
それを証明するのが「モンスターを仲間にする」ということです。もしかしたら、モンスター達は勇者と戦いたいのではなく、勇者を含めた人間と仲良くしたいのかもしれません。
そういう考えでゲームをすすめていくと、このモンスター達はもしかして人間のエゴの犠牲者なのではないかと思いました。
「敵だったはずのモンスターが仲間になる」
魔王も含め、全てのモンスターと仲良くなる。もしかしたら、ドラクエの開発者もそのような気持ちなのかもしれません。
ゲームをやっていて一番面白かったのは、モンスターの仲間が次々と増えて行くときでした。そして自分はドラクエから「相手の立場の気持ちで考える」ということを学びました。
……文字数として700文字くらい。
あとは原稿用紙の文字数を2000枚に
あるいは、友達と喧嘩して仲直りしたエピソードなんかも使えそうだ。何故なら喧嘩した直後、たとえどんなに自分が悪くても「アイツが悪い」と文句を言う。これは「魔王は悪い奴らに決まってる」という考え方と同じではないだろうか?
「スライムくらいは知ってるかな?」
あの玉野の事だ。きっとゲームの事なんかよく知らないだろうし、それこそドラクエの「固有名詞」なんか入れたら減点でもしかねない。
だが、スライムというのを「一番弱いキャラ」「可愛いキャラ」と書けば、さすがに理解は出来るだろう。
「勇斗、入っていい?」
勇斗の部屋をノックする音と共に、母親の美香の声が聞こえる。時間は昼の12時を回っている。
「そっか、昼飯か」
感想文の課題に集中して取り組んでいた結果、あっという間に時間が過ぎていた。いつもは自分が下に降りて行くのだが、12時過ぎても降りてこないから昼飯を知らせに来たのだろうか。
「いいよ」
部屋のドアを開けると美香は
「電話。玉野先生から」
「玉野先生?」
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