LEVEL29 / 大人のエゴ、子知らず(前編)
「自己満足、といいますと?」
「先生、生徒に嫌われてますよね?」
確かに、日頃からゲームを目の敵にしていること。あるいはゲーム機を没収した話を以て、自分の事をやれ泥棒だとか、魔王だとか言っている生徒がいることは知っている。
だがそれは先程言った通り、ゲームにドップリ嵌って勉強や部活動を疎かにすることを食い止めようとする彼自身の努力によるものだ。
そもそも自分自身はゲームを嫌ってなどいない。そのような努力に対し「嫌われたくなければ生徒の言いなりになれ」と言わんばかりの指摘は彼にとって、最も
「つまり、生徒に
「そう言ってるんじゃないですよ」
「じゃあ、どう言ってるのですか?」
むろん、中にはそういう教師も存在する。生徒がウケるような話をし、彼等の機嫌をとることで自分の人気、というより保身を図ろうとする連中だ。
いや、教師自身の保身だけで終わるのならば、まだよい。
特定の生徒を
そんな教師の
「何というか……
「独りよがり?」
「そう、独りよがりです」
教師、いや教師だけではない。会社でも上司……いわゆる「立場が上の人間」は多くの場合、ある
それは何かと言うと「自分の
それだけではない。立場が下の者が、自分の意図したとおりに動かない場合に「無視した」「やる気がない」と一方的に
「あなたの意図は、娘には伝わっていません」
「それは残念です」
「残念?それでよく教師なんかやってられますね」
「どういうことですか!」
自身の人格否定ともとれる発言に対し、さすがの玉野も
「再提出が親心なんて、そんなもの勝手な思い込み。つまり「強者のエゴ」です」
コピペ率の高い文章はコンクールに出展することは出来ない。確かにそれは正論だ。
しかし、だとすれば何故、それを課題を出す前に言わなかったのか?コピペは単に「
「コンクール出展を狙うような子は、むしろコピペサイトを見るべきなんです」
コピペサイトを見る事そのものが不正行為、と考えるのは非常に
そもそもコンクール出展を狙うような生徒はコピペサイトなんかに頼らずとも感想文は書ける。だがそれと「コピペサイトを見るな」というのは別問題である。それは自分の娘が「見なかったために」不当な評価をされたことが何よりの証拠だといえるだろう。
自分の書いた原稿を
だが、それは原稿が手書きではなく、パソコン等による「ワープロ原稿」であることが大前提だ。学校の読書感想文の多くはワープロ原稿ではなく「手書き」である。
「ワープロ原稿で「下書」をするのが常識なんて、大人の勝手な思い込みです」
例えば大人が出版社に原稿を持ち込むとして……仮に手書きの原稿を要求されたとする。
おそらく大半の場合はワープロ原稿で下書きし、その内容を原稿用紙に「
だが、子供はそういった大人のような作業を行うだろうか?おそらく多くの場合、いきなり手書きを行うのではないだろうか?
筆記に使用するのは基本的にシャープペン、もしくは鉛筆である。当然だが消しゴムによる修正が可能だ。大人と違い、ボールペンや
おそらく、そこに「ワープロ原稿の下書」など存在しない。まして「コピペチェックツールで事前に判定」など行う子は
これは教師も同様だ。実際に教師がチェックするのも、最初の段階はコピペサイトの文章と提出された作文を比較する、いわゆる「
「つまりコピペサイトを見なければ、コピペ率の判定が出来ないわけですね?」
「確かにそうですが」
「じゃあ何で、提出前にサイトを見て確認するよう指示しなかったんですか?」
玉野は「
だが、本当にそうだったのだろうか?
いわゆる文学少女である月城陽菜は、コピペサイトなんか見なくても感想文がきちんと書けるような子だ。また、非常に真面目な子でもある。仮にそれを見たとしても、不正利用するような子ではないだろう。
そして何より、それが不正利用ではなく、自分自身の書いた作文の「コピペ率チェック」を目的に見る必要があったとしたら……
「コピペサイトを見るなというのであれば、チェックを
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