第13話 ラブコメ展開
翌朝。オレは人の家で寝たせいか寝付けず、いつもより早起きをしてしまった。時刻は朝7時。オレは部屋を出てトイレに向かった。その途中で三人の部屋の前を通り過ぎたが、誰も起きてる様子はなかった。まだ寝てるようだし戻ったらまたオレも寝るか。今日は土曜日だし翌日も日曜日で休みだ。個人的には土曜日が好きだ。これぞ休日というものを満喫できる。というのも土曜日は翌日も休みであるからだ。そうだ、土曜日だからこそできる、二度寝をしよう。生活習慣何て知ったことではない。日曜日に直せばいい。
ここでちなみにだが、ちなんでしまうのだが、オレが編み出した過去最高記録は四度寝である。そして寝過ぎたせいか日曜日も生活習慣を直せるはずもなく結局、月曜日に遅刻をしたな。
そんなことを思い出しながらオレはトイレに行き終わり、トイレを出た。すると、前に冨永の母親がいた。
「あ、どうもです」
「あら、おはよう。起きたの?」
「ああ、どうも。色々とお世話になってすみません。お蔭様で良く寝られました」
ほんとは寝られてないけど……。
「そう。それはよかったわ。初めてヒイラギのお友達を招くものだから、行き届いてないところがあったかどうか心配でしたわ」
「いえ。もう十分にお世話になりました。ありがとうございます」
「いえいえ。あの娘、ちょっと不器用で人と馴染めないところがあるけど本当はすごく友達が欲しかったみたいなの。これからもあの娘をよろしくね。八橋君」
冨永の母親はそう嬉しそうにオレに言った。冨永の母親が余りに嬉しそうに言ったが、オレはその期待に応える自信がなかった。そして気の利いたことも言えず、
「そうですか……。こちらこそお願いします……」
と、ただただそう言った後、冨永の母親は何かを思いついたような顔をして言った。
「あ!そうだわ。八橋君。まだ時間もあるし朝風呂なんてどう?きっと気持ちいいわ」
「あ、えっと大丈夫ですよ」
何故なら、土曜日限定奥義の二度寝が出来なくなりますから、とは言えない……。
「遠慮しなくていいのよ」
冨永の母親はおもてなしをとことんしてあげたいのか、朝風呂に入ってほしそうな目でオレを見てきた。それでオレは結局断れずに、
「あ、じゃあ、ありがとうございます」
オレは朝風呂をいただくことになった。
「ふう、少し早起きしすぎたな」
そう言いながら風呂場まで向かいドアを開けた。
確かに、朝風呂なんて久しぶりだな。気持ちいいだろうな。そう思ってドアを開けて入った時、オレは後悔した。そう後悔とは事後的にするものである。
「ん?」
風呂場に入ってみると、なんとそこには万条と冨永が脱衣をしていた。昨日入った時よりも甘い香りがした。
な、なんだこの良い香りは……冨永の母親が昨日掃除したのか?最近の洗剤は良い香りなんだな。
「お、お、お、おまえ!!何故ここに!?」
「お、お前!の、の、の、のぞきにきたのか!」
そう言って冨永は身体を隠した。
「うわっ!ハッチーとうとう我慢できずに覗きに来たの?」
「え?」
オレは何かを言おうとした。しかし何が起こっているのか理解できずにただ立ちどまって見ているいるだけであった。
万条はタオルを巻いていたが冨永はまだ脱衣している途中であったらしくすぐさま腕で身体を隠していたが、なんていうか冨永の胸を見るとやっぱり意外とデカいというのは確信した。
「な、何て言うか……デカいな……」
冨永は赤らめていた。オレの顔も熱くなっているのが分かった。
「いつまで見ている!早く出ろ!」
「うわっ、悪い!」
冨永はタオルをオレに投げつけてきた。と、同時にオレは風呂場を出た。
「なんだよ、なんでいるんだ」
と、呟き、風呂に入ることを諦め自分の部屋に戻った。
「なんだこのラブコメ展開は」
しばらくして時刻は8時。朝食を頂くことになった。オレは用意された居間に行った。もう既にそこには全員そろっていた。
「おはよう八橋、オレをおいて覗きしたらしいね」
「立花お前な……」
「立花、お前加害者になりたかったのか?けだものだな。それにしても早く座れ。変態」
「いや、あれはだな……」
「ハッチー。黙りなさい」
「いや、あんまりだろ」
冨永の母親が入ってきた。
「ごめんなさいね。八橋君。私が勧めたあまりに」
「いや、とんでもないです。あれは偶然ですから……」
といって万条と冨永を見た。
「何を見てる。こっち見るな。変態」
「ハッチー。見るんじゃない」
「あんまりだ……」
オレたちは朝食を食べ終えて、もういろいろお世話になったので家を出て帰ることにした。
「お邪魔しました!」
「お邪魔しました」
「色々とどうも。お邪魔しました」
「いいのよ。また遊びに来てくださいね」
「はい!」
「どうもです」
そして、オレたちは冨永家を出てバスに乗って帰っていた。
「楽しかったねみんな!」
「そうだな!」
「それにしてもだいぶお世話になったな」
「ハッチー覗きはダメだよ~」
「いや、だから覗いてないし。偶然だ」
「あはは。なんか家に帰りたくないなぁ」
万条の顔はどこか寂しげであった。そうしてオレたちは各自、家に帰った。
結局映画を見るといって、見たはいいが完全に冨永家にお世話になりっぱなしであった。それにしても家は旅館みたいで、母親もいい人であった。しかしどうして母親は温厚篤実であるのに娘はあんなに傲岸不遜になってしまったのだろうか。
何にせよ、道楽部のせいでまた貴重な休日を使ってしまった……。
翌週の月曜日。
昼休みに部室に行った。既に全員が集まっていた。
「よ!ハッチー!」
「よう、万条。ていうか冨永先日はどうも」
「気にするな。覗きは許せんがな」
「いや……あれは」
「まぁ……」
その後、冨永は少しためてから言った。
「その、楽しかった。こちらこそみなありがとう」
万条がすぐに答える。
「ワタシだってありがと!またよろしくね!」
「ああ……。またよろしく頼みたい……」
立花もそれを聞いて、
「その時はオレも誘ってよ!!」
「ああ、もちろんだ」
その会話を聞きながらオレは黙っていた。すると冨永がオレのことを見て、
「おい、お前も来てもいいぞ」
と、強気に言ってきた。
「それはどうも。まぁ暇があったら頼むよ」
「何を言うか。いつでも暇であろう」
「お前こそ何を言うか。暇をしていて忙しいんだ」
「お前……生粋の怠け者だな……では、全員そろったところだし、部活内容を決める」
呆れながらオレの返事をした後、次の部活内容を決めることになった。すると、立花が真っ先に答えた。
「オレはこの前、話してたボーリングにひさびさにいきてぇ!」
「ワタシも賛成だ」
「オレは反対。学生ノリだな。ボーリングとかって楽しいか?」
「お前も学生だろ。じゃあ、他に案あるのか?」
「ああ。ある。例えば、無料でできることは散歩とか、散歩とか、あと散歩とか、特に散歩はおすすめだな。」
「全部ボツだ。特に散歩は論外だ。」
「おい。都会にも結構散歩して楽しいとこあるんだぞ、身近なところだってな」
「お前、年寄りみたいだな、おじいちゃんか」
「オレがおじいちゃんならオレより年上の人はなんなんだよ」
万条が相当散歩したくないのであろうか。こんなことを言ってきた。
「じゃあ、多数決で決めよう!!」
「え?絶対に勝てる気がしないんだが」
「じゃあ、散歩がいい人ー?」
「はい」
思った通り、手をあげたのはオレだけであった。
「じゃあ、ボーリングがいい人ー?」
オレ以外が手を挙げた。万条に至っては両手を挙げていた。
「じゃあ、4対1でボーリングね!」
「何で4なんだよ、お前は2票もってるのかよ」
「あー、これはねー、オーちゃんの分!」
「オーちゃん?ああ、そう言えば前から名前は聞くが一度も来てるところを見てないな。オレは来ているというのに」
すると、いつものように冨永が、話を戻す。
「さ、で、なら多数決で決まったことであるしそうだな明日の放課後あたりにボーリングとやらに行くぞ」
「はーい!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます