第12話 ソウルメイトとの出会い

前日に台湾の茶芸館で出会ったあと、再び故宮博物院でも出会った

大畑健一と笑顔の女性。

最初にお互い自己紹介をすると、女性の名前は富岡と言うのだった。

富岡は健一の説明に耳を済ませるように2人は博物館の展示物を

順番に見渡す。「あ、大畑さん。あの展示物面白いわね」

と富岡が指差したのは、白菜の形をした展示物。健一はうれしそうに

「ああ翠玉白菜だ。これだなあうわさの白菜!」


「富岡さん。これはヒスイでできた白菜だよ。清の時代につくられたもので

この故宮博物院の名物の展示物だよ」健一の得意そうな説明に

うれしそうにうなづく富岡

「すごく細かいわね。葉の上にキリギリスまでいるわね」

「でも・・・」ここで突然言葉のテンションが下がる富岡

「これは実は生きてはいないのよね。

生き物の形をしているのに・・・・これには魂がないというか・・・」

突然テンションが下がるだけでなく不思議なことを言い始める

富岡に少しあわてる健一。

「いや、まあこれは本当に生きていたら、動き出すし、

いや、その非常にまずいですから・・・・。

そう、あくまで観賞用のアート作品だからあまり気にしないほうが」

と富岡のテンションをあげようと努力するが、富岡の気持ちは静かなまま。

「何かいやなことを思い出したんだね。

ここにいないほうがよさそうだ、気分を変えよう次のところへ」と

健一は富岡の手を思わず握る。

そのときに不思議と違和感どころか懐かしい暖かい感覚が健一に走った。


しかし健一はそんなことより、急に落ち込んでしまったように見える

富岡の気持ちをやわらげるほうが必死で富岡をせかすように手を

引きながら次の展示物を見に行くのだった。


「大畑さん。さっきはごめんなさい。

別に嫌なことを思い出したわけではないけど

ちょっと頭の中で考え事しちゃったみたい」

富岡の笑顔が戻り、安心する健一であった。

一通り展示物を見学して時計を見たら、午後3時を回っていた。

「大畑さん。今日は本当にありがとうございました。

大畑さんがいないと半分以上意味がわからなかったかも」

「いえいえ、昨日、まったく見ず知らずの僕に富岡さんがお茶の入れ方を

丁寧に教えていただいたせめてものお礼ですよ」

と健一が微笑むと「あ、今だから言えるけど、

実はあのときの大畑さんすごく挙動不審で

見ていられなかったのよ。私と同じ日本人ということもあったけど、

あのときに不思議と大畑さんのことが凄く気になってどうしても

放っておけなくて・・」

と今までにないうれしそうな表情の富岡を見ると健一は、

ますます富岡のことが気になって仕方がない。

「そうだ、もし時間がありましたらこの後、

ちょっと早い目の夕飯をご一緒しませんか?」

無意識に富岡をデートに誘う健一であったが、

途端に富岡の表情が少し硬くなる。

「大畑さん。本当はすごくうれしいのだけど、実は今夜の飛行機で

高雄に行って現地の友達の家に泊まる約束したの。ごめんなさい」と

さびしそうに頭を下げる。


健一は。両手を左右に振りながら、「いや、失礼。そうですよね。

すでに予定ががあるのですから

ついつい私が昨日のことから調子乗ってしまって・・・・」と照れ笑いする。

「ごめんなさい。大畑さん、あれ?髪が」富岡は急にあわてる。

「さっき落としちゃったみたい。髪留めていたのにばらばらになっちゃって」

そういえば、ツインテール姿だった富岡の髪が今は完全にばらばらに

なっていたが、健一はそんなところを見ている余裕が全くなかった。

「ああ、ごめんなさい僕も気づいていなかった。

あっちょっとそこで待ってて」

そういうと健一は、目の前にあった雑貨屋に入っていく。

2・3分後に戻ってくると「ちょっと安物だけど、どうぞ」と

富岡に渡したのはリボンの形をしたピンクの髪留めであった。


「ええ?大畑さんそんな、もらっていいんですか?」まさかの健一から

のプレゼントに驚く富岡「いいんですよ。

結局僕も案内に必死になっていて、大切な髪留めが落ちたのにまったく

気づいていなかったので、このくらい高いものでもないし。

色もさっきまでつけていた同じピンクがあったから

ちょうどいいかなと思って。ただ、留め方が前とは違うかもだけど」

「ありがとう。大畑さんお言葉に甘えて早速。」とうれしそうに

健一が買ったばかりのゴムのついたピンクの髪留めをつける富岡。

それをうれしそうに見つめる健一であった。


「残念だけどここでお別れね。本当に楽しかった。

プレゼントまでもらえて」と嬉しそうな富岡

「あ、あのう。もしよろしければ日本で一度会ってもらえませんか?」

健一は緊張しながら伝えると、

「はい、いいわよ大畑さん。日本ではこんなことないように

1日時間がゆっくり取れる時に会いましょう」と、いとも簡単に承諾した。

健一はうれしそうに。「ありがとう。では僕の連絡先を渡します」

といつの間にか手書きで書いていた健一の住所と電話番号を富岡に渡した。

「ああ、はいでは、私のほうも」と富岡もその場で住所と電話番号を

書いた紙を健一に渡す。

「では、日本で」「ええ、それから私、変なこと言うかもしれないけど。

たぶん。大畑さんとはソウルメイトのような気がするの」

「へ?」一瞬戸惑う健一に富岡は時計を見ながら

「日本のときに詳しく話するわ。も時間がないからこれで」と

富岡はあわただしくその場を立ち去っていった。


「ソウルメイト・・なんだろう。変な事とか行ってたけど・・・

そういえば博物院でもよくわからないこと行ってたなあ。

まあいいや。富岡さんとまた日本で会えるそれだけでいいよ」

といいながら、富岡のメモを見る「富岡千恵子・・・千恵子さんか」

そういいながら一人うれしさをかみ殺すのに必死な健一であった。

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