第13話 運命の初デート

健一にとっては意外なところで思わぬ出会いがあり、

別れ際にお互い日本での連絡先を交換することができたので、

帰国してからも健一は富岡千恵子のことが片時も忘れることがなかった。

富岡が帰国した予定の翌日に早速電話し、初デートの約束を取り付ける健一。

いままで、恋愛らしい恋愛をしていなかった健一にとっては、

初恋に近いものを感じるのだった。

そして当日、待ち合わせた場所は横浜。

巨大な中華街があるこの町は健一が一番好きな町でもあった。



横浜の山下公園で待ち合わせ。約束時間より5分早く到着した健一であったが

驚いたことにほぼ同時に待ち合わせ場所に、

台湾と時とはまったく違ったスカート姿のおしゃれな服装で

でも。健一が台湾で買ったピンクの髪飾りはつけていた富岡千恵子も

反対側からきているのが見える。

「ああ、富岡さん!ちょうどいいタイミングだね。

いや台湾では大変お世話になりました」

「いえいえ、大畑さん。私のほうこそ。

私も横浜の町が好きだったからちょうど良かったわ」


挨拶もそこそこに、港に停泊している船を見ながらお互いの自己紹介をする。

「ああ、富岡さんは僕より2つ年上なんだね」

「そうね。まあ大した差じゃないと思うけど・・」

「そうだ、富岡さん確かソウルメイトとかいってたけど・・・」

富岡は、静かにうつむきながら、

「そう。台湾でそう思ったの。魂同士の結びつきというか」

静かに語る富岡の表情を真剣に見つめる健一。

「でもね、健一さん。ああ、ごめんなさい大畑さん」

「いや健一でいいよ。その代わり僕も千恵子さんと呼ぶから」

「そう、ありがとう。健一さんとはソウルメイトというより

さらに結びつきが強いツインソウルではないかとそんな気がしたの。

実は前世が同じ魂じゃないのかとか」

千恵子が、目を節目がちにそのようなことを言い出す。

ソウルメイトでも面を食らっているのに「ツインソウル」と言う

更に別のキーワードが出て戸惑いを隠せない健一。



「あ、ああのう千恵子さん・・・それたぶん違いますよ」健一の意外な返事に

我に帰ったような表情になる千恵子。

「あ、ごめんなさいお会いして今回3回目。

日本で始めてお会いする人に、私変なことばかり行ってしまって・・・。

なんとなく健一さんを初めて見たときからずっと前から

知っているような人のような気がして・・・で、

いつもそばにいるとなんとなく安心してしまって、

だからついつい油断して変なことばかり」

「いえ、そうではないんです。」千恵子が節目がちなるのをあわてて

否定しようとする健一。

「実は、あのう僕もそうなんです。あなたとはじめてお会いしたときから、

こう何というか懐かしいというか

そしてこうやって一緒にいたら不思議に気持ちが

落ち着いて安心するというか・・・・

でも、それは違うんです。これは僕の宗教の問題だけど・・・」

慌てながらしゃべる健一に驚く表情の千恵子

「実は、僕はクリスチャンでして、あのーアーメンというやつ

キリスト教徒なんです。

で、そこでは聖書というものを読んで

神様やイエスキリストの教えを教えてもらうんだけど、

そのソウルメイトとかそんな言葉は出てこないから、違うんじゃないかと。

いや、別に宗教の押し売りじゃないから」と

手を頭の後ろにおいて照れ笑いする健一。

するとうれしそうに笑う千恵子

「そうなの?健一さんも!実は私もクリスチャンなの生まれながらね」

「そうだったんですか・・・だから、ピンクの十字架のペンダントを。」

「あ、まあこれは。それもあるけどどちらかといえば、アクセサリーかな。

もういない、父からのプレゼントだからずっと身に着けているだけ」

といいながら千恵子の顔が照れたように少し赤くなる。


「父親がいないのも同じだ!こんなところまで共通だなんて・・・

でも、千恵子さんはクリスチャンなのになぜそんな聖書にない言葉を?」

不思議そうな表情の健一に千恵子は、ちょっと笑みを出しながら

「うーんそういわれると難しいけど、これは感覚かなと。

キリスト教の教えとは違うかもしれないけど

聖書って解釈はいろいろできるらしいし、カトリックとかプロテスタント

とかいろんな教派があるじゃないの。

だからちょっと違う発想もありだと思うので、ソウルメイトとか

ツインソウルというのを知ったときこういう出会いがあったら

いいなあなんて思ったのね」

千恵子の言おうとしていることがようやくわかった健一は、

「あ、じゃあ間違いないよ!多分それツインメイト?だっけ」

「いえ、ツインソウル」「ああそう、それだよ絶対に同じだよ」と

うれしそうに思わず千恵子の手を握る健一。

千恵子はいやな表情ひとつせず握り返す。



「ほらやっぱりお互い手を握ったらすごく安心な気分になる」

「本当ね。私たちやっぱり運命の出会いだったかも」

そういいながらお互い手を握りながらもうしばらく海を見る

「そろそろ行こうか?」「はい」そういいながら、

2人はゆっくりと海とは反対方向に歩いていく。

周りからは、もうずいぶんと前から恋人か夫婦であるかのようにしか

見えない雰囲気で自然とお互いの体を寄せ合いながら、

初めてのデートは進行していくのだった。

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