概要
社会になじめないセフィーにできることといったら、真っ白な自分を物珍しさで買う男たち相手にからだを売ることだけ――
の、はずであった。
ある時セフィーは客である大貴族の邸宅で客の息子に捕獲される。
このまま闇に葬られるのかと思いきや、
「僕と一緒においでよ我らが王宮へ! もちろん女装して」
こいつは何を言っているんだ?
セフィーはまだ、自分が百万の民を欺いて伝説の王妃になる運命にあることを、知らない。
※身体障害者・難病患者に対する差別的な表現を含んでいるため残酷描写有りにチェックを入れます。
関連作品: https://kakuyomu.jp/works/1177354054882761509
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!奇想天外にして普遍的
女であることを隠し王となった少女が、女装した美少年を王妃に迎える、魅惑的な設定です。
男装の麗人のお話は多くても、女装の姫君というのはちょっとめずらしいです。
『とりかへばや物語』でも女装の男君は女御にはなりませんでしたしたしね(笑)
しかし、読み始めると、とても重く、しかし普遍的な問題に通じるお話でした。
王妃となる少年はアルビノ、つまり、先天的な疾患により、並外れて色が白かったのです。
彼の母親も周りも忌み嫌ったり、或いは珍獣のように見たり。
彼は深く傷つき、ときに傷ついていることも忘れている程の、傷を抱えています。
「少年が王妃となる」という奇想天外な設定と、「ありのままの自分を受…続きを読む - ★★★ Excellent!!!世界が美しいのは、色とりどりの「個性」があるからなんだよ
セフィーはアルビノとして生まれ、親からも充分な愛情を貰えずに育った美しい少年です。
そのセフィーが。
ひょんなことから男装の王シャムシャと出会い、国の王妃となるお話なのですが……。
壮大な歴史物語であり、政治の権謀渦巻くお話で。
朝からずっと一気読みしてしまいました。
一気読みしながら……。
物語の冒頭から最後まで、ずーっとセフィーに言ってやりたかった。
ずーっと励ましてやりたかった。
よく見てご覧、世界は美しいんだ、と。
この世界が美しいのは、個性があるからなんだ、と。
セフィーという個性があり、ほかにもいろんな個性があるから、この世界はいろとりどりなんだよ、と。
いろんな光があ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!あなたに恋をして、人間になった。
蒼き太陽がさんざめく王国で、女王陛下は歴史を欺いた。
彼女がたったひとり娶った妃は、ましろくうつくしい少年だった――
そんな物語において丁寧に辿られるのは、少年と少女のぎこちなくてつたない恋のはじめから終わりまで。
『マーイェセフィド』は壮大な歴史、あるいは王権を巡る謀略を切り取った作品ではありません。
けれど、二人がただただ暖かい関係を育むには、世界はどうしようもなく理不尽でした。
そして理不尽であるがゆえ、この作品は確かに恋物語である、と読み手に感じさせます。
(以下、物語の核心・決定的な展開には触れない程度のネタバレを含みます。ご留意ください)
少年の名前はセフィー…続きを読む - ★★★ Excellent!!!世界はこんなにも、優しい
姫であった自分を死んだことにされ、男として王へとおしあげられたシャムシャ。
白い髪、白い肌、その容姿から自分を人ではない化け物だと思ってきた少年・セフィー。
国の頂点にいる少女と、その底辺にいる少年。
まったく違う境遇でありがなら、どちらも孤独だった。
本来ならば出会うこともなかった二人が出会って、頑なだった女王の心はほどけていく。生まれの違いゆえのすれ違い、本来王となるはずだった兄との確執、さまざまな困難を超えて迎えた結末には、本当に「ありがとう」と「おめでとう」で溢れていた。
――世界は二人に優しかったか?
それまでの世界は、決して二人にとって優しいものではなかったと思う。厳しく、…続きを読む