エピローグ:その先
「……シャロさん♪ 手をつなぎましょうっ」
「あの、シャロさん…て、手を…つないでも、いいですか?」
「シャロさんの手ってひんやりしてますねぇ、冷たくて気持ちいいです♪」
シャロは眉間にしわを寄せていた。
「手より先に発展したいわ……」
先日は嫌われなかっただけでも奇跡、と思っていたが、一旦ハードルをクリアしてそれが普通になると今度はその上を望みたくなるのが人の性。
シャロもそんなわけで、次のステップに進みたいと思っていた。
「あの、パネちゃん」
「はいっ、なんですか?」
手をぎゅっと握りながら、まぶしい笑顔で返事するパネ子。
「そ、そろそろ手だけじゃなくて、もっと素敵なコトしたくない……?」
「え? 手より素敵なこと、ですか?」
「そう。ほら、私とパネちゃんの仲も、もっと発展してもいいんじゃないかなーって思うのよ。ね、どう?」
「んー、そうですねぇ。じゃぁ……いいですよ? 次のステップってやつですね?」
「えっ、いいの?!」
シャロはパネ子の顔をちらちらと、正確にはその口元、より正確にはぷりっと可愛らしい唇を見ていた。
「はい、というわけで……」
パネ子は、ゆっくりと手を離して、シャロの頬に手を伸ばす。
「ぱ、パネ、ちゃん……」
シャロは自分の心臓の音がどくん、と高鳴るのを感じていた。
「……覚悟はいいですか?シャロさん」
「え、ええ。とっくにできてるわよ?」
「……じゃぁ……いきますよ?」
パネ子は、ゆっくりと……
手を、頬からさらに奥へやり、シャロのツノをなでた。
「ひゃっ!?」
「おおー……硬い……! 硬くて黒くて立派です!」
ナデナデとシャロの両ツノを撫で回すパネ子。
「あ、あのー、パネちゃん?」
「なんですか?」
「つ、ツノなの?」
「はい! 前からじっくり触ってみたいと思ってたんですよ~♪」
笑顔で返事。
なんていうか、ズルイ。とシャロは思った。そんな笑顔されたら何もいえないじゃない。
「えへへ、カッコいいですよねツノ。寝るとき邪魔そうですけど」
「そ、そうかしら? 生まれつきだからそんな邪魔に思ったことなかったわね」
ちょっとくすぐったいかも……と思いつつ、シャロはなされるがままにツノを撫でられていた。
「……添い寝したときにパネちゃんに当たったりするのかしら?」
「あ、試してみます? じゃ、今日はお泊りですよー♪」
「えっ、えええーっ!? そ、そんないきなりっ、心の準備がっ!さ、三分まって!」
「はい、ツノ撫でながら待ちますね~」
パネ子は、にっこりと楽しそうにシャロのツノを撫で続けていた。
結局どこも平和であった。
パネ子ちゃんの憂鬱 鬼影スパナ @supana77
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