第32話 空回り


 気がついたら座って手を繋いだまま、朝になっていました。


「……あ」


 いろいろと、問題が解決していないことを思い出します。

 うん。

 どうしよう?


「……とりあえず、村に戻ってみる?」


 シャロさんがいつもの顔でいいました。すっかり調子を取り戻したみたいです。


「そうですねー……って、シャロさんすごくにやけてますよ?」

「えっ、そう? まぁ、ええ。幸せすぎてつい。 もうこのまま世界が滅んでもいいわぁ」

「手を繋いだだけでもういいんですか?」

「そうね、まだ滅んじゃ困るわね! プレイヤーさんに直談判してきましょう!」


 シャロさんがぐいっと私の手を引っ張ります。

 やっぱり、シャロさんは頼りになるな、と思いました。


 そして村に戻ってくると、プレイヤーさんは交易所でなにやら指示を飛ばしていました。


「あれ、どこ行ってたの? おかえりー、あれ、シャロさんもいらっしゃい」

「ちょっとプレイヤーさん! 魔物側についたってどういうこと!?」

「ん? なんのこと?」

「何って、パネちゃんから聞いたわよ、魔物の証を手に入れたって……ん?証はどこ?」

「さっきフェンっちが持ってったけど。あそこも勇者側だからさー」


 え?

 どういうことなんでしょうか。


「えっ、もしかして魔物の証を勇者の証もってる村が壊すと勇者の証増えるの知らなかったの?」

「え? なにそれどういうことですか?」

「いや、つまりさ。うち廃村だから攻められるじゃん? 魔物の証を持ってたら壊されるでしょ? そしたら総合的に見て勇者の証の数が増えるっていう……わかる?」


 ……つまり、その。


「他人の勇者の証の数を増やすためにあえて魔物の証を受け取っていたということね……?」

「そういうこと。最終的には勇者側にまわって勇者の証もらうよ」


 ……

 つまり、私たちは勇者側。最初からブレてないということ?


「で、おっと。それじゃちょっと隣村に配送して、ついでに建築命令だしてくるよ。二人もくる?」

「えっ、隣村、ですか? いつの間に?」

「ジョウトシティで軍旗作成してねぇ。そのままうちの隣、シャロさんちの隣でもあるかな? に、新村開拓したの。今度からそこメインで発展させてくからね」


 と、ちょうどお手紙が届いていました。見ると、戦闘結果通知が20通くらい届いていました。


「……っと、ジョウトシティも今ちょうど受け渡し完了したか。よし、首都からもういっこ軍旗作ってどこか開拓しよっと」

「ええっ!? 議会Lv20じゃないのにまた軍旗つくれるんですか?!」

「開拓した村が占領されたら元の所は新しく作れるんだよ。……しらなかったの?」


 まったく知りませんでした。


「で、でもその、えーっと。首都はどうするんですか?」

「このままトレハン先生と資材置き場ってところかな。首都のままにするから奪われることはないよ。ま、新村開拓するから資源送ったりもするとして……さーて、これからまた少し忙しくなるぞ~?」


 ……

 はぁ、なんですか。

 つまり、その。


「……何とかなりそうね? いろいろと」

「はは……そうですねぇ、はぁ~~……」


 新村へ赴くプレイヤーさんを見送り、私は深く溜息をつきました。

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