第8話 夏のクエスト

 私はいつものようにシャロさんとお茶をしていました。


「あつい……」


 季節はもうすっかり夏ですね。

 なんというか、日差しが刺すようです。ちくちくと。

 シャロさんは日傘常備です。

 うん、それでも長袖で色の濃い服。結構暑そうですよね、シャロさん。


「こういう日は……海、とまではいかなくても湖畔にでも散策に行きたいところね」

「そうですねぇ、とはいっても……まぁ闘技場しかいくところ無いんですけどー」


 木陰でシートをしいてのんびりお昼寝、というのもまぁ悪くはないですが、

 やっぱり夏といえば水場で泳いだり涼んだりが基本じゃないでしょうか。

 と、そんなことを思っていたところに、プレイヤーさんが割り込んできました。


「そんなパネ子に朗報だぞっ! ちょっとこいつを見てくれ、どう思う?」


 といってプレイヤーさんは一枚のチラシを突き出しました。


「夏限定サマーBOX!? おぉ、ついにプレイヤーさんも課金をする気に……」

「あら素敵。浴衣とかきっとパネちゃんに似合うわ。 ……私はこのヒトダマが欲しい所ね」


 おお、効果速度+1なんですか。速度はボーナスPで上げられない重要項目。さすがシャロさんお目が高いです。


「違う、その下」


 デスヨネー、プレイヤーさんが課金とかするわけないですよね。

 そして、その下のところにはクエスト追加!とか書かれていまして。


「ん?」


 さらにその中の、夏限定クエストというものがありました。


「夏限定クエスト……防水防具の開発?」

「水着らしい」


 水着というと。水に入って遊ぶための、とりあえず防具とは言いがたい服ですよね。

 確かに新装備は欲しいですが、そんなに価値のあるものでしょうか?


「是非いきましょう」


 と、答えたのはシャロさんでした。


「えー? でも、水着なんて無くても水場では遊べますよ?」

「ダメよ。水着じゃないと」

「そうだぞ、それに今着てる服より防御力が高いっていう報告もあるし」

「ええ!? あんなに露出しててですか!?」


 いわく、防御が20もUPするらしいです。

 むむむ、私が勇者になったときから愛用しているこの服より防御力が高いなんて……!


「ていうかその服防御力0じゃ」

「わかりました! それじゃぁ水着を手に入れる冒険の旅に行こうじゃないですか!」

「その意気よパネちゃん。水着を手に入れたら一緒に湖畔に行きましょう」

「んじゃ、適当に遠くの湖畔へ散策に行ってもらおうか」


 そういって、プレイヤーさんはメモに座標を書きました。

 んんー……聞いたこともない地名ですね。まぁ、片道で1日半はかかりそうです。


「それじゃ私も準備しようかしら。おやつ……だけじゃなくてご飯も欲しいわね。往復で三日か……

 この暑さじゃお弁当も痛んじゃうし……途中にある村で食材を調達すればいいかしら?」

「え?シャロさんも一緒に行っていいんですか?」

「別にいいんじゃない? 散策だし。戦うわけじゃないし、一人で行くより二人のほうが楽しいだろーし」


 プレイヤーさんはいい加減ですが、こういういい加減さならまぁ好きです。


「そんじゃ、早速行ってきてくれ。こっちは1鯖のほうでも命令出してくるから」


 そういって、プレイヤーさんはまたいつものように別世界へ行きました。



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