閑話:シャロの手のひら

 人間に恋をする鬼人、というのは世界にどれくらい居るのだろう。少なくとも一人ここにいる。

 カワイイんだもの。仕方ないじゃない。まぁそれだけじゃないけれど。

 あのとにかく必死なところとか、いつも一生懸命なところとか、太陽のような笑顔とか。

 時折、理性が保てているか心配になるほどの魅力が、あの子にはあると思う。


「……パネちゃんと握手しちゃった」


 サクとかいう人間の勇者がパネちゃんと握手をしているのを見て、自分もしたくなった。

 いや、パネちゃんの手に残る握手の感触を、私の手で上書きしたくなったのだ。

 我ながら、子供っぽいことをしたな、と少し反省している。

 それにちょっと不自然すぎたかもしれない。

 これでは私の気持ちがパネちゃんにバレてしまうかもしれない。

 私の気持ちが知られたら、嫌われてしまうかもしれない。

 それだけは避けたい。

 私がパネちゃんを嫌いになることは一生無いが、逆の保証は無い。

 今の関係を壊したくない。

 絶対、嫌われたくない。

 私は、手をぎゅぅっと握り締めた。


 ……

 パネちゃんの手、柔らかかったな……

 正直、あの手でドラゴンを殴り飛ばせるなんてこの目で見ていなければ信じられないほど。


 あ、そういえば前に手をつないだりしたことはあるけど、握手としてははじめてかも?

 となると、せっかくパネちゃんと握手したわけだし……


「明日の朝くらいまで洗わなくても……いいわよね?」


 私は、手のひらに残るパネちゃんの手の感触を大事に愛おしく感じながら寝床に着く。

 今日はいい夢を見れそう……ね

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