閑話:フェンの頭痛
ジョウトシティの建築物を見た後、帰還中にフェンは眉間にしわを寄せていた。
「……完璧すぎるんだけど。どういうことなの?」
「む?それは何か問題があるのか?」
サクが尋ねた。
自分が受け渡される村が完璧であることは本来望ましいことのはずだ。
フェンは、ゆっくり答える。
「てっきりさ、適当に安い建物乱立させて人口を稼いでそれで譲渡するだけだと思ってたんだよ」
それなのに、なんと言うことだ。あの建築チョイスは。
本格的な副村を作っているようにしか見えなかった。いや、実際本格的だった。
しかも恐らくあの様子では首都から相当資源を送り込んでいるのだろう。資源量も倉庫ギリギリだった。
「ありえない。なんで、他人にくれてやる村にアレだけ資源を注ぎ込む?」
「確かに、言われてみればおかしいな……」
「もしかしたら、あそこを拠点にうちに攻めてくる気、とか?」
「そ、それは……戦争になるのか……?」
「いや、だがそうなってもあの村を奪えばいいだけか? ホント、何を考えてるんだ」
これほど資源を注ぎ込んでいる村を、しかもまだ注ぎ込んで、さらに育てた村をタダでくれるらしい。
「……いっそ何かの要求があったほうがまだ信用できる」
「! もしや、そうか。それが狙いなのでは? 我々を混乱させ、疲弊させる戦術だ」
「いや。あの村には後ろ盾になる国家も何もない。その戦術をとるメリットがない」
思いつく端から、その戦術ではないと理由をもって断言される。
相手はまったく読みきれない、異質な存在。
「やっぱり敵に回すのは得策じゃないみたいだな、あの雪ダルマは」
「ああ、そのようだ」
しかし、自分が思いつく戦術をより思慮深く上回り、逐一明確に否定できるフェンがリーダーで
こちらはこちらで本当に心強い、とサクは感じていた。
*
一方そのころ「Lv10廃村?」では、パネ子の頭が痛い事態になっていた。
「あの!? 今見たらあっちの倉庫だけじゃなくて首都の倉庫もかなりギリギリですよ!?」
資源がパンパンであふれそうだ、と連絡を受け、パネ子はその事実を確認した。
あふれた資源は捨てなければならない。
もちろんうちの村ではそんなことは無いだろう、と思っていた。
「どういうことですかリーダーさんっ!」
「いや、それがさー。うちって資源レベルをひたすら上げてたじゃん? そのくせ建築速度UP効果のある建築工房をあとから建てたもんだから、もー資源消費より生産が圧倒的に上回っちゃって。見てのとおり資源が全体的に余り気味で」
「も、もしかして、副村の方にガンガン資源輸出してるのって……」
「うん、すまない。実はただのあふれ回避なんだ。 あ、建築工房優先なのも資源余り気味なもんだから、建築に時間かけたくなくてさー」
昨日、副村発展は真面目にやってるんだと感心して損した。
パネ子の中で、見た目はアレだけど実はデキるリーダーさん、というイメージが、音を立てて崩れていった。
「もっと計画的に発展させてくださいよ!? 行き当たりばったりすぎます!」
「あ、ちなみにこれからフェンさんちにお裾分けってことで綿送りつけるところ。捨てるよりマシだし」
「せめてなんかもらっておいてください!」
「ダメ、溢れる」
この後、正体不明の綿資源を一方的に送りつけられてフェンはますます混乱するのであるが、
それはまた別の話。
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