パネ子ちゃんの憂鬱

鬼影スパナ

プロローグ

第0話 世界の話


 『みんなの勇者伝説 ~魔王の侵攻~』


 それは、村系のブラウザゲームだった。

 最初に3つの種族、「人間」「エルフ」「鬼人オーガ」からひとつを選んで村を作り、

 種族ごとに3種ずついる強力な兵士「勇者」を一人パートナーに選び、村の「指導者」となって彼らとともに他のプレイヤーの村と協力や戦争をしつつ、村を発展させていくゲームだ。


 俗に言う村ゲーであり、一応、魔王という魔物のボスを倒すという大目的はあるものの、魔王は終盤にならないと出てこないし魔物は魔王が出てからでなければ襲ってこないので「システムは丸々ト○ビアン(有名な村ゲーである)のパクリだろ?」と言われた。


 だが、「みんなの勇者伝説(以下「みん勇」)」には、ト○ビアンにはない要素、『萌え』がそこにはあった。


 「みん勇」の可愛いキャラクターに惹かれて、利用者は膨れ上がった。

 たちまち最初の世界であるファストサーバー(通称:1鯖)は通常のリミットを越えて10万人が集まった。そしてさまざまなバグや、世界の遅延を引き起こし色々と話題が絶えなかった。

 しかし話題は絶えないものの、そのあまりにひどいバグの嵐に耐え切れずゲームを離脱していく者も多かった。


 このあたりは詳しくは「みんなの勇者 wiki」を参照願いたい。

 (残り時間0時間0分0秒になっても帰宅しないサボリ勇者や、メール機能の遅延等、プレイに支障をきたすバグからこんなの良く気付いたなレベルのバグまで数々のバグが列挙されている)


 そんなバグも落ち着き、第二の世界であるセカンサーバー(通称:2鯖)が公開された。


 それなら先にバグによる遅延処理をどうにかしろというくらいにいまだに1鯖では遅延が激しい。 


 それもそのはず。2鯖もあっという間に人が集まり、リミットまで入ったが、その数は1鯖の3分の1以下である3万人で設定されていた。離脱やサーバー移行が多かったといってもまだ9万人は1鯖に居たのだ。

 2鯖なら軽いだろう、と1鯖を離脱して2鯖を始めた人も居たかもしれないが、2鯖も大体変わらなかった。


 まるで何倍もの重力の中でゲームをプレイしているような動作状況に、ますます離脱も増えていったが、それはそれとしてやはり人は多かった。


 で。まだバグ冷めやらぬ今日この頃、ついにサードサーバー(通称:3鯖)が公開されることとなった。

 この3鯖の公開と同時に、別サーバーであれば同アカウントでかけもちして新拠点を作れる仕様に変わったのだ。


 さて。この物語は、そんなゲーム世界の、サードサーバー(通称:3鯖)で生活するプレイヤー……のパートナー、「勇者」の物語である。


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