第13話 散策道中2
「『というわけで、次は山岳ね』……って、プレイヤーさんってば軽ぅーく言ってましたけど、やっぱり片道1日半ですよシャロさん」
「そうね。また泊りがけね」
シャロさんと私は、再び旅に出ていました。今度は山岳でドラゴンの抜け殻を取ってこいとのことです。
道順は大体同じで、またあのエルフ村を通ってー……うん、そこには問題はありません。
……今回の問題は、シャロさんと目を合わせられないということです。
なんかこう、前回湖畔に行ったときにですね。
……こう、ほっぺにちゅーされちゃったんですよ。
ま、まぁ、鬼人の愛情表現らしいですね、シャロさんいわく。愛情表現ならアリですよね。
というわけで極力気にしないようにしつつ、シャロさんの顔を見ようとするのですがー
「あ、ところでおやつは何ですか?」
「ブルーベリーがいっぱい手に入ったから、ブルーベリーを使ったケーキよ」
シャロさんが微笑みながらこちらを見つめてきます。
「そ、そうですかっ、楽しみです♪」
ですが、目が合うと、つい逸らしてしまいます。
いやそのっ……思い出しちゃうんですよ。ええ。顔が真っ赤になってるとおもいます。
だってだって、鬼人ではともかく、人間でちゅーといえばつまり恋人同士ですることですし?
なんていうかその。
そんな風に考えてしまう自分が恥ずかしいです、一番。
まぁ女の子同士なのでそういうのはないとは思うんですけど、意識すればするほどシャロさんのふとした仕草とかが気になってしまうんです。
髪をかき上げるときにふと見える耳とか、
頬に手を当てて微笑ん出るときのやさしい瞳とか、
おやつをお皿に盛り付けてるときの白くて綺麗な指とか。
うう、今まで色恋沙汰がなかったからって動揺しすぎですよね、私ってば。
それとも私以外はほっぺにちゅーでこんなに後々までドキドキしたりしないものなんでしょうか?
いっそ馬鹿にされるのを覚悟してプレイヤーさんに相談してみようかな?
「パネちゃん」
「なんですか?」
「……私のこと、嫌いになった?」
少し寂しそうにシャロさんは言いました。
「な、なんでですかっ!そんなわけないですよっ」
「でもなんか最近目を合わせてくれないし……」
っていうか、シャロさんは平然としてますが、やっぱり慣れているんでしょうか?
「やっぱり、こんな私と一緒に居るのは……嫌よね? 惰性で付き合わなくてもいいのよ?」
シャロさんが、寂しそうに微笑みました。
「なんでそうなるんですかっ」
「だって……嫌だったからまだ怒ってるんでしょ?」
「怒ってませんよっ……め、目を合わせるとその、思い出しちゃって恥ずかしいだけですっ」
「え?そうなの?」
シャロさんは、私の前に回りこんで顔を見てきました。
思わず目をそらしてしまいますが、がしっと頭を捕まえられてシャロさんのほうに固定されてしまいました。
「嫌じゃなかった……んだ?」
「え、あぅ、その。シャロさん美人だし、女の人でもあこがれちゃうところがありますからその」
あうう、め、目が回りそうです。
「本当に? 本当に私のこと嫌いになったんじゃないのね?」
「本当ですっ、ていうかシャロさんばっかり平然としててずるいですよぅ……」
と、シャロさんがくたーっと座り込んでしまいました。
「あ、あれ?どうしたんですか?」
「……よかったぁ……あんなことして、パネちゃんに嫌われちゃったかと思ってたから……」
本当によかったわ、と安堵のため息をつくシャロさん。
……そっか、私は恥ずかしくて目が合わせられなかったけど、シャロさんは私に嫌われたかもって緊張してたんですね。平然としてるように見えたのは、よく見てなかったからかもしれません。
「もー。シャロさんのこと嫌いになんてなれませんよ」
「ほんと?ほんとに?」
潤んだ瞳で私のことを見上げるシャロさん。
「当然です。そもそも私たち、初めて会ったときに殺しあったのに友達になってるんですよ?」
「! ……そういえばすっかり忘れてたけど、そうだったわね……」
「はい♪ だから、何があっても嫌いになんてなりません」
恥ずかしくて目が合わせられないことくらいはあるかもしれませんけれど、ね。
「……やっぱり、パネちゃんは凄いわ」
シャロさんはくすっと微笑み、それから、少し申し訳なさそうに言いました。
「安心したら腰が抜けちゃったみたい…………おんぶしてもらってもいいかしら……?」
そこからしばらく、私はシャロさんを背負って歩きました。
うん、これはいいですね。おんぶしてれば目を合わせることはありません。
……
でもその、背負うとですね?
背中におっぱいが当たるんですよ。むにゅーって。
大きいなぁ、うん。
……何を食べたらこんなに大きくなるのか聞いておきましょう。
そして、シャロさんの腰が抜けちゃった以外、道中は何事もなくエルフ村に到着しました。
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