閑話:魔術の才能
「それで、これがハチ除けの魔方陣……結構難しいわよ」
「うわっこれは……なんとも……! こ、細かいっ!」
先日の約束どおり、パネ子はシャロに魔術を教わっていた。
「んー? パネ子にシャロさんじゃないか。何してるの?」
「あ、プレイヤーさん」
「魔術の勉強よ。これは、ハチ除けの儀式につかう魔方陣なの」
「ちょっと魔導書のほう見せて。……ふむ、ふむふむ」
見せて、といいながら勝手に見る図々しいプレイヤーさん。
「ふむふむ言っても、ホントに分かってるんですか~?」
「才能の無い者が見ても、理解はできないと思うわよ……?」
大事な本を勝手にとられたため、ちょっと不満げにシャロは言った。
しかしプレイヤーさんは魔導書の内容をしっかり理解していた。
(あれ? これってただ煙でハチを気絶させるだけじゃないか?)
こほん、とプレイヤーさんは咳払いをして言う。
「これなら魔方陣描いた紙を燃やすより、……そうだな、この枝と枯れ葉を集めて燃やしたほうがいいぞ?」
まだ水分の多い枝葉を焚き火につっこむと大量に煙が出る。
それは、ただのちょっとした知識だ。
「は? 何を言っているのかしら。そんなことで魔方陣と同じ効果が出るわけないでしょう?」
「そーですよ。プレイヤーさんってば魔術なめてるんですか? それじゃただの焚き火ですよ」
どうやら信用されていないようだ。
どうせなので、魔導書よろしくカッコよく言ってみることにした。
「青い葉に含まれる風の魔素が枯れ葉によって土属性に変質し、それを燃やすことで発生する炎と土の属性を身にまとった煙を浴びたハチは全身がしびれ動けなくなるのだ。魔方陣は手順を踏んで擬似的にこれを行っているに過ぎない。そのまま自然界の元素を用いたほうが効力は強いというわけだ。ちなみに、焚き火の煙を吸い込むとのどがイガイガするのもこの作用が働いているからだぞ」
何を言っているのかよくわからない。
しかし二人にはとても効果的だったようだ。
「なっ……まさか、魔導の原理を読み解いたとでもいうの!?」
「うそです、きっと適当なこと言ってるんですよっ! 嘘じゃないっていうならやってみてくださいよ!」
「えー。まぁいいけど」
実際にやってみると、煙はもうもうと立ち上り、見事にハチを封じることができた。
「プレイヤーさんが魔術をつかえたなんて……こ、これは驚きですっ!」
「……くっ……これからは師匠と呼ばせてもらうわ……」
「焚き火をしたらなぜか弟子ができてしまった件について…………い、芋でも焼こうか」
焼きたての芋はなかなか美味しかった。
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