閑話:国家と戦争


「悪い、サク。少しここの村に行ってくれ」

「む? ……ほう。同国家の村だな。わかった、援軍か?」

「いや。もうすぐそいつ追放になる。襲撃だ。最初は兵がいる可能性を考慮してサクに行ってもらう」


 フェンは、嫌そうな顔をしていた。

 何があったのかは知らないし、聞ける立場でもないかもしれない。

 しかし、サクはそれでも聞いた。


「何があったんだ?」

「……何、この村が協定国に戦をしかけてね。そのまま謝罪の連絡もない、粛清ってやつだよ。ま、危うく戦争になるところだったけどさ、一応僕の外交テクでこいつを追放、餌場化でどうにか、ね」


 フェンは疲れたため息をつく。


「なに、あの白だるまを相手にするよりはストレスも溜まらないさ」

「そうか、フェン。お疲れ様」


 サクはふと、自然にフェンの頭を撫でていた。


「…………子ども扱い? それとも、気遣いなのかなこれは」

「す、すまん。気を悪くしたか?」


 あわてて手を引っ込めようとするが、その手をフェンが捕まえる。


「いや、折角だ。もう少しこのまま頼むよ……なんか、落ち着く」

「ああ……わかった」


 サクはフェンの頭に手を置いて、やさしく撫でた。

 フェンは、目を閉じてそれを受け入れている。本当に、リラックスしているようだ。


「……あまり無理をしないでくれ。倒れられたら困る」

「それは勇者として? それとも……個人的に言ってるのかな?」

「ふむ。まぁ、両方だ」


 少しためらって、サクは答えた。

 フェンは、くすりと笑う。


「ああ、そうだね。……ま、倒れない程度でがんばるよ。サクのためにもね」

「……それはプレイヤーとしてか? それとも」

「両方だよ」


 フェンはいつもの飄々とした笑顔でサクの手から離れる。


「頼らせてもらうよ、サク」

「俺に出来ることは何でもやろう。任せておけ」


 フェンのためであれば何でもやってみせよう。そういう心情がサクの顔から読み取れた。


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