第31話 告白
今日はそんなわけでもう休んでいいよと言われました。
頭を落ち着かせるためというか、なんというか。
私は、シャロさんの村に来ていました。
「? ……あ、パ、パネちゃん、どうしたの?」
「しゃ……シャロさぁぁぁんっ!」
私はぎゅぅっとシャロさんに抱きつきました。
「えっ、な、なに? どうしたの?」
もうなんだか訳が分からなく、誰かに抱きつかずにはいられなくて。
誰かに……シャロさんに、話を聞いて欲しくて。
「うぅぅー……」
「ああ、よしよし。よくわからないけどとりあえず落ち着くまでこうしてましょうか?」
シャロさんは私を優しく撫でて、落ち着かせてくれました。
「……」
「落ち着いた?」
「はい……」
私はイスに座り、シャロさんのいれてくれたお茶を飲み、一息つきました。
「……で、本当にどうしたの? こんなに取り乱して」
「プレイヤーさんが魔物側の人間だったんです……」
「……へぇ、そうなんだ?」
シャロさんが私の正面に座って、私の目をじっと見つめます。
「だったら私も魔物側がいいな」
「ええっ!? シャロさんまでっ!?」
くすっとシャロさんは微笑んで、
「だって、それならパネちゃんとお揃いでしょ?」
と、言いました。
「もっとも、その。……うちにはプレイヤーいないからそういう決定もできないけどね」
「う、す、すみません……いつも自分勝手な相談ばかりで」
「いいのよ。それが嬉しいの」
シャロさんはやさしく私の頭をなでてくれました。
その手は暖かく、ほのかにいい匂いがしました。
「私は正直こんなだから、世界なんてどうでもいいの。……むしろ、そうね。パネちゃんが私の世界の全てとも言えるわ」
にやり、とシャロさんが妖しく微笑み、黒衣の呪術師の一面を見せます。
「そ、そうなんですか?」
「ええ、どうせパネちゃん以外何の価値もないもの、この世界なんて」
くすり、と少し悪っぽく笑みを浮かべるシャロさん。
……ん?
「あれ? ってことは、その。しゃ、シャロさんの好きな人って、ももも、もしかして私ですか?!」
「っ!? それこのタイミングで言うの!?」
シャロさんの顔が一気に赤くなり、ずざざざっと2mくらい後ずさりしました。
あ、あたりっぽい?
「えっ、ちょ、ちょっとまってください、えっと、お、女の子同士ですよ私達っ」
「あ、あの、その、ぱ、パネちゃん?」
オドオドと先ほどまでの妖しい感じはすっかり消えて、可愛らしくなってるシャロさん。
「え、えっと、えっと……その、お、女の子同士じゃ、好きになっちゃ、だめ、かしら?」
「そそそんなっ、えっ、わ、私、え? いや、そのっ、違いますっ、駄目とかじゃなくて、なんで私なんですかっ?」
その私の一言に、シャロさんは意を決したように私を見つめて言いました。
「なんでって……言ってもいい? 引かない?」
「い、言ってください」
それから30分程、シャロさんは私のいいところを羅列し、褒め上げ、いかにして自分が惚れたかを語りました。それは本来30分で収まるものではないようで、30分くらいのところで私が恥ずかしさに耐え切れずに止めたのです。
「も、もういいです、分かりました。その……つまりその、シャロさんは……わ、私が好き、なんですね」
「ええっ! 大好き! 頭の先から足指の爪の先に至るまで全部っ!」
途中から吹っ切れたシャロさんは、声高らかに宣言しました。少し涙目気味で。
きっと、嫌われるかもしれない恐怖を押さえつけ、ありったけの勇気を振り絞って言った「大好き」でしょう。
言ってから意識を取り戻したかのように、恥ずかしそうに、しゃがんでうつむいてしまいました。
私は、その。たぶん、耳まで真っ赤です。耳まで真っ赤にしながら、シャロさんに返事をします。
「……シャロさんが、私のことそんなに好きだったなんて、思ってもいませんでした」
「えっ、えと、その……め、迷惑よね? こんな、一方的に……」
「いえ! そんなことないです! ないですけど、その」
「……」
シャロさんが、今にも泣きそうな顔で、私のことを見つめています。
「私、シャロさんが言うほどいい人間じゃないですよ……? それでも、いいなら、その……ちょっとずつ、ならいいです」
「……ふぇ?」
「……手、繋ぎましょ?」
私は、シャロさんに向かって手を伸ばしました。
シャロさんは、恐る恐るその手を握り、……ドキドキしてるのが手から伝わってきます。
「パネちゃん……どうしよう、嬉しくて泣きそうなんだけど」
「お、大げさですねシャロさんっ、だ、大体前にも手を繋ぐことくらいあったじゃないですかっ」
「だ、だって、それとこれとは、その、意味が全然違う、しっ……!」
シャロさんは、ポロリと涙をこぼしました。
「……あー、もぅ、シャロさんってば案外泣き虫さんなんですね?」
私は蝶と華の刺繍入りのハンカチで、シャロさんの涙を拭いてあげました。
「あ、あはは、そうみたい。全然知らなかったわ」
シャロさんは、
とっても素敵な、幸せな笑顔を私に見せてくれました。
耳まで真っ赤でした。
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