第30話 証

「モンスターの砦ができてたぞ」


 ある日、プレイヤーさんがそんなことを言いました。


「……ついに、ですか」


 思えば長く覚悟していたことです。

 これからついに魔物との本格的な戦いが始まります。


「それで、公式の発表では、世界は勇者側と魔物側に分かれて戦うらしい」


 勇者側・魔物側……それはつまり、世界のために戦うか、世界を壊すために戦うか、ということですね。

 しかし、本来みんな協力して世界を救うために頑張ってきたのに魔物側につくなんて人がいるのでしょうか?

 そういうひとはよほどの捻くれものだと思います。

 見ると。二つのミッションがありました。


「勇者側につく場合は勇者の証、魔物側につく場合は魔物の証がもらえるぞ」

「もちろんうちは勇者側ですよね」

「うん、魔物の証もらってくるよ」


 ……?


「もちろんうちは勇者側ですよね?」

「うん。魔物の証もらっといたよ」


 あれ、おかしいな。なんか魔物の証もらったとか聞こえるんですが。

 プレイヤーさんがなにやら禍々しい証を見せてくれました。

 って、もうミッション済ませたんですか。選ぶだけで一瞬ですか。


「わー、これが勇者の証ですか。カッコイイですね!」

「いや、魔物の証だから」


 ですよね。うん。


「な、なんでですか!?」

「なんでって……そりゃ、当然だろ?」

「今まで魔王を退治するためにがんばってきたんですよね?!」

「そうだねー。あとそろそろ廃村にするよ、この村。資源Lvも結構高くなったし」

「!!」


 ああ、ああ。

 なんということでしょう。

 世界を救うために戦うと信じていた私ですが、プレイヤーさんが魔物側に荷担するというのであれば私は魔物側として戦わなければなりません。プレイヤーには逆らえない、それが勇者の宿命です。

 しかも同時にこの村を廃村にするとか。

 いっぺんに話が進みすぎというか、その。


「あ、あの、頭がパンクしそうです……」

「ついでにジョウトシティの譲渡が決定したよ。明日ね」


 ……

 パンクしますよ?ホント。これ。


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