第11話 銀髪の雑貨屋店員

 酒場から出て、私は雑貨屋に行きました。

 そう、この村には雑貨屋があるようです。

 うちの近所には課金プレイヤーのフェンさん&サクさんの村にしかない雑貨屋です。

 私自身、雑貨屋に来るのは初めてです。

 果たしてどのようなものが売ってるのでしょうか?


「おー」


 そこには小物やアクセサリー、お菓子に駄菓子、それに大量の本や玩具がおいてありました。

 なるほど、サクさんが言っていましたが、雑貨屋には兵士たちの移動速度アップの効果があります。

 これは、兵士たちが欲しがるものが置いてあり、それ目当てで「また雑貨屋いきたいなぁ、早く行きたいなぁ」と自然と足が速くなるらしいですが、この品揃えなら私も通いたいですね。Lvがあがるとより良い商品が増えるのでしょうか。


「お気に召しましたか~?」


 店員のエプロンをつけた銀髪のエルフさんが、にこやかに言いました。


「んー、ここって蝶の小物とかも売ってたりしますか?」

「もちろん売ってますよ~、雑貨屋ですからね♪」


 おおー。……シャロさんに何か買ってプレゼントしようかな?


「ところでわたし~、この村の勇者やってるミミといいますのでよろしくです~」


 唐突に店員さんが握手を求めてきました。


「え? あっ、ホントだ?!」


 言われてよく見てみると、確かにエルフ勇者のひとり、おおらかな魔術師さんでした。


「なんで勇者がこんなところで店員を……?」

「うふ、実はここの雑貨屋には秘密の商品がありましてねー? 私がほしい商品をこっそり入れてもらってるんですよ~♪ だから、こうしてたまにお手伝い兼秘密の棚の見張りを……♪」


 いったいどんな商品を置いているんでしょうか。気になります。

 と、そんな私の顔にてぃーんときたのか、ミミさんがぽつりと言いました。


「良かったら見てみます?」

「いいんですか?」

「気に入らなかったら黙して語らずの誓いを立ててくれるなら。

 ……もし気に入ったなら交易所つかってこっそり通販だってしてあげますよ~♪」


 なんか少し気になるところですね。


「わたしは同好の士がほしいだけですから~」


 私は、少し考えました。

 ですがよくよく考えてもこれ、デメリットないですね。気に入らなかったら他に言わなければいいだけですし。

 しかも気に入った場合は通販までしてくれるとのこと。雑貨屋の商品を私の村でも入手できるとしたら、これはうれしいの一言に尽きますよね。


「わかりました。言いません」

「ふふ、じゃぁ、こっちです。……この本棚、を、ちょいっと押すと~……♪」


 ミミさんが押した本棚が、くるっと回転しました。

 そして中から秘密の商品が――


「こ……これは……!!」





「ん、あら、お帰りパネちゃん。……私ってば、寝ちゃったみたいね」


 酒場に帰ると、シャロさんが厨房を借りておやつを作っていたところでした。


「いえいえー、それはいいんですよ。それより、支度はできましたか?」

「あと10分くらいでできるわ。今日はチーズケーキよ」


 おいていく予定だった気がするバスケットに、また新たにおやつが補充されました。

 うん、新しくおやつをいれたら別に預かってもらわないで持って行きますよね。昨日はプレイヤーさんがいい事を言っていた気がしましたが気のせいでした。


「今日はティーセット私がもちますよー。夜にはまたこの村に戻ってきて泊まりますからね」

「……もう一泊パネちゃんとお泊り……こ、こんどこそっ」


 なんかシャロさんがやる気に満ち溢れています。


「あれ?ところでパネちゃん。何持ってるの? ……注文表? 本、かしら」

「あっ、はい、この村の雑貨屋さん、通販もやってるらしいのでちょっともらってきました」


 そして私たちはお昼ごろに村を出て、湖畔へ向かいました。


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