第37章 六 線 非 偽 蔦 葉
37―1 【六】
【六】、小さなテントの形だとか。これを積み重ねた字があり、(むつ)と言う。その音から数の【六】(むつ)の意味になったようだ。
【六】は整数、多くの言葉に使われている。
例えば、五感を越えた知覚の第六感。
また金沢の兼六園。この【六】は宏大・幽邃・人力・蒼古・水泉・眺望のことであり、この六つを兼ね備えた庭園だそうな。
そして、
漢字の「偏」は意を表し、「つくり」は音を表すというルールがある。
その上に、漢字の成り立ちを次の六種類に分類。その書物が六書だ。
(一) 象形
物の形の字形
── 日・月・山・木・耳・川 ──
(二) 指事
位置や状態の概念、その字形の組み合わせ
── 上・下・凹・凸・本・末 ──
(三) 形声
意味を表す意符と音を表す音符との組み合わせ
── 江・草・河・銅 ──
(四) 会意
象形と指事の組み合わせによって、新しい意味を表す
── 岩・信・武・林・炎・家 ──
(五) 転注
用字法の一つ、しかし定説はない
(六) 仮借
他の同音・類字音の字を借用
食物の器の意の「豆」を、穀物の「まめ」
矛の一種の「我」を、「わたし」の意に
以上、ちょっと話しが固くなってしまいましたから、ちょっと軟らかい話題を。
この【六】という数字、四字熟語では六根清浄か五臓六腑くらいしか思い付かない。数字の中では、一や三に比べあまりにもマイナー。
しかし、王将の餃子の数は6個。雪の結晶は六角形で六花と呼ばれてる。
【六】って割にいいだろと言いたいが、人はそれぞれ好きな数字を持ってる。
統計的に人が好む数字の順で並べてみると、
好き 7 ← 3 ← 8 ← 5 ← 2 ← 1 ← 4 ← 6 ← 9 ← 0
だが、これだけでは面白くない。
そこで数字による性格判断、これを紹介させてもらおう。
ネット内にいろいろと載せられている。それらを要約すると、つまり……。
「1」の好きな人
ただただ認められたい、そう一途に思ってる人。
「2」の好きな人
私の可愛らしさわからないの、とにかくそうアピールしたい人。
「3」の好きな人
ニャンコのように、可愛がられたいと思ってる人。
「4」の好きな人
岩石より硬い鉱物、頑固な人。
「5」の好きな人
ラーメンかカレー、いやうどん、とにかく好き嫌いが激しい人。
「6」の好きな人
あれっ、どこへ行ってしまったの? 知らぬ間に、一人で突っ走る人。
「7」の好きな人
ああしたい、こうしたい、実現は遠いが、とにかく願望が強い人。
「8」の好きな人
なんで? なんで? をただただ繰り返す、生真面目すぎる人。
「9」の好きな人
あっちへ行ってよと言ってはみたが、結局あ~あと、寂しがり屋な人。
「0」の好きな人
誰が見ても、どこから見ても普通、それでも特別だと思われたい人。
ということだが、
このエッセイ、実は章当たり六つの漢字で構成させてます。
なぜなら、【六】という数字、結構気に入ってるのですが……。
ということで【六】、
漢字一文字の旅、「旅は道連れ、世は情け」なんちゃって、結局一人で突っ走ってま~す。
すいません。
37―2 【線】
【線】、糸偏に「泉」。「泉」は崖から流れ落ちる水の形だとか。
その細い筋を【線】というそうな。
これが英語では「line」(ライン)。
そんなライン、無料通話/無料メールが最近大賑わい。
スマートフォンやパソコンで、複数の人たちとのチャットやグループ内だけのコミュニケーションができる。
またメールは絵文字でなくオリジナルスタンプと言われる絵、イラストを貼り付けての会話。いよいよ文字は不要となってきた。
そんなLINE(ライン)、便利だがグループ内での虐めやシカトもあり、犯罪も起こり、社会問題にもなっている。
この先、どう進化して行くのだろうか? 興味津々かな。
そして、これを運営しているのがLINE株式会社。ハンゲームジャパン(株)からNHN Japan(株)となり、2013年4月に現商号となったようだ。
社員数約650名、資本金125億円の時代の最先端を走る会社だ。
しかし、未だ未上場。
だが最近2014年夏に東証に上場するとニュースが流れた。これによりラインに絡む銘柄が噴き上がった。
しかし、会社発表では「現段階では決定の事実はない」と否定報道された。
これでマーケットは右往左往、いや悲喜こもごも。
いやはや、ことほど左様に【線】という漢字、いろいろ
37―3 【非】
【非】、左右に歯が並んだすき櫛の形だとか。
うん、確かにこれはわかり易い。そして昔、この櫛を
それがなぜ「あらず」の否定の意味になったのだろうか?
一説によれば、【非】は左右互いに背を向けいるから。そこから「そむく」→「あらず」に。
そんな【非】、非常識、非公開、非常勤などいろいろな熟語を作る。そして最近よく使われる四字熟語が「是々非々」(ぜぜひひ)。
正しいこと(是)は正しい、正しくないこと(非)は正しくないと認める意味だ。
しかし、正しいとしていることが最初から間違っていたら、これは……えらいこっちゃ。「是非非是」という反対バージョンの四字熟語があっても良さそう、と老婆心ながら思ってしまう。
そして【非】、他の漢字と組み合わされて「罪」、「悲」、「扉」などと多くある。
さてさてここで、魚に非ずの「鯡」って、何?
そう二つに身を裂いて食べる「二身」 →→ ニシンなのだ。
で、なぜニシンは魚に非ず?
アイヌの人たちはニシンを米だと言い伝えた。
また米の獲れない貧しい江戸時代の松前藩、年貢はニシンだったそうな。
だから、ニシンは魚に非ずであり、「鯡」の漢字になったとか。
とにかく【非】という漢字、他の字と組み合わさって歴史をも背負ってきたことになる。
37―4 【偽】
【偽】は人偏に「為」。
この「為」は「手」と「象」を表し、【偽】は人が象を手なずけるさまを表しているとか。
ここから人の作為により姿形を変える意味だとか。
したがって【偽】(にせ)という言葉には従来変化だけの意味で、悪い意味はなかった。
しかし、最近世間は大騒ぎ。一流レストランの当事者側はメニューの誤表示だったと主張を繰り返すが、それは偽装だと問題となっている。
その一例がバナメイエビを芝エビとメニューに書いていた。
バナメイエビの仕入れ値は1キロ1400円、芝エビは2500円、倍ほどの価値に偽っていたということだ。
バナメイエビはクルマエビ科、体長200ミリメーターほどでメキシコからペルーの東太平洋の海洋で獲れる。またタイやインドネシアで養殖され、大量に輸入されている。
食感はプリプリ、日本人好みだ。
一方、芝エビは同じクルマエビ科、体長は150ミリメーターまで、内湾の泥底に生息する。食感は……、うーん、食べたことがないので、わからない。すいません。
いずれにしても、「海老で鯛釣る」でなく、「海老で客釣る」ということか。
それにしても【偽】という文字が、右部の「為」は象ではなく、エビに見えてくるから不思議なものだ。
37―5 【蔦】
【蔦】、草冠に「鳥」でツタ。調べてみたが、なぜツタなのかわからない。
そんな【蔦】、紋となれば、かたばみ、蝶と並び女性が好むベスト3に入る。いわゆるこれが八代将軍・徳川吉宗が用い始めた蔦紋だ。
ツタは他の樹木や建物に絡まり茂る。秋には紅葉し美しい。したがって女紋として好まれてきたようだ。
そんな【蔦】、英語では「 ivy 」(アイビー)と言う。
よく耳にする言葉にアイビーリーグ ( Ivy League )がある。それはアメリカ東部のエール、ハーバードなどの名門私立八大学であり、そのスポーツ連盟だ。
きっと古い校舎にツタが絡まっているのだろうか、それとも八大学すべてが茂り繁栄を続けているからなのか、そこからアイビーリーグと呼ばれるようになった、……かな?
とにかく【蔦】、このような話題はあるが、【蔦】を含めた漢字熟語がまったくない。
どうして?
あっても蔦屋書店、それもローマ字の「TSUTAYA」。
ということで、結論、【蔦】は樹木や建物に絡まるが、他の字には一切絡まらない孤高な漢字なのだ。
37―6 【葉】
【葉】、草冠の下の部は木に新しい3本の枝が伸びてる形であり、草冠で木の葉となったとか。
そんな【葉】、秋となると赤や黄に色づく。まことに美しい。その「秋の夕暮れ」を下の句にした有名な三句・三夕(さんせき)がある。
寂しさは その色としも なかりけり
心なき 身にもあはれは 知られけり 鴫立つ沢の 秋の夕暮れ (西行法師)
見渡せば 花も紅葉も なかりけり 浦の苫屋の 秋の夕暮れ (藤原定家)
それにしても、いずれももの哀しい。
さてさて、こんな秋は遠慮して、「天高く馬肥ゆる秋」を兼ねて、紅葉狩りにでも出掛けたい。
早速、どこへ? となるが、日本人が訪ねたことがある紅葉名所は、嵐山、日光、箱根、香嵐渓、京都東山、十和田湖の順だとか。
えっえー、香嵐渓と十和田湖はまだ行けてない。おいおい焦らすなよと言いたいが、日本に居座る秋雨前線が去ってしまえば──
秋の夕日に照る山もみじ
濃いも薄いも数ある中に
松をいろどる
山のふもとの
【葉】、さあ、出掛けてみよう、まずは近場の紅葉狩りに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます