第44章 山 伝 呪 傘 税 栗
44―1 【山】
【山】、高い山々が連なってる形だとか。
元々中国には火山がない。中央の主峰、その左右に山、このように地殻変動や浸食によってできた山々が連なる。
【山】の漢字は、その美しい姿を表してるそうな。
なるほど、【山】の文字だけで絵になってる、ような気もする。
そんな【山】、日本で一番低い山、東日本大震災の津波で削られて返り咲いた標高3mの日和山から一番高い山、富士山まで日本は山だらけ。
そんな中、奈良県桜井市に標高467mの三輪山という円錐形の山がある。
この山の歴史は古く、邪馬台国の卑弥呼の墓ではないかとも推測されている。
神代の時代のことだ、
この姫の元に夜な夜な立派な男が通ってきた。
やがて姫は身ごもったが、その男が誰なのかわからない。そこで姫は男の着物の裾に麻糸を通した針を突き刺した。
朝となり、男はどこかへと消えたが、姫はその糸を辿って行った。すると、その男は三輪山の
これで腹の子は大物主神の子供だとわかったとか。
それだけの話しだが、
時は移り、667年、天智天皇は飛鳥から大津へと都を移した。
それに随行した後の妻・
『三輪山を しかも隠すか 雲だにも
絶世の美女の額田王、その心情は――慣れた地を離れることであり、後ろ髪を引かれる思いだったとか。今も言い伝えられている。
ことほど左様に、【山】という漢字、いろいろな物語や伝説を連ならせてくれているのだ。
44―2 【伝】
【伝】、元の字は【傳】で「人」と「専」の組み合わせ。
「専」は嚢の中の物を手で丸くした物のことで、これを人が背負う形が【傳】だとか。
そこから背負って運ぶ、他に運び伝えるの意味になったとか。
そんな【伝】、やっぱり放っておけないのが都市伝説。
気になるものを五つほど紹介しよう。
東京井の頭公園、恋人同士がボートに乗ると、必ず別れる。
なぜなら、祀られてる弁財天が嫉妬深いから、だとか。
ある男が暇で、鏡の中の自分とじゃんけんをしたら、向こうがパーでこっちがチョキ、勝ってしまった、とか。
ある大学の教授、自分の講義に学生の出席が悪い。頭にきて、試験問題で、何枚かの写真の中から教授の顔を選べと出題した。結果は、ほとんどが不正解だった、とか。
愛媛県の蛇口は三つある。青は水、赤はお湯、そしてオレンジ色はジュースだ、とか。
下校途中、子供が赤いコートにマスクの女に、「私、きれい?」と声を掛けられた。
子供は気を利かせ、「お姉さん、きれいだよ」と答えると、女はマスクを取り、「これでもか!」と叫んだ。
その時、女の口は耳まで裂けていて、子供は恐くなって逃げた。
だが、すぐに追いつかれて、口を裂かれてしまった、とか。
そして、最近話題になった伝説がある。
それは――幻の巨大魚タキタロウ。
山形県の大鳥池に生息すると言われてる、長い下あごと大きな尾びれが特徴の体長2mの巨大魚だ。
漫画「釣りキチ三平」でも取り上げられたことがある。
そんなタキタロウ、30年振りに生態調査された。
しかし、残念ながらその生態は明らかにならなかった。
だが、タキタロウの伝説はこれからも語り継がれて行くことだろう。
ということで、【伝】という漢字、口裂け女からタキタロウまで、人から人へとよく伝えてくれていて、その働きは立派だ。
44―3 【呪】
【呪】、「口」に「兄」の組み合わせで、読みは(ジュ、のろう)。
この右部の「兄」は祝詞を入れた器を頭にのせて神を祭る人の形だとか。
ただ同じような漢字の「祝」とは異なり、【呪】は人に災いをもたらすことを祈ることで、まじないとなる。
そんな【呪】に「文」が付いて「呪文」。
ディズニー映画のシンデレラ (Cinderella)、魔法使いがシンデレラに魔法をかけた。
ソラカドゥーラ・メチカブーラ・ビビディ・バビディ・ブー、と。
(Solakadoola menchicka boola Bibbidi-bobbidi-boo)
するとみすぼらしいシンデレラはお姫さまになり、カボチャとナスは馬車になった。
なんと素晴らしい呪文だろうか。
初めてこの映画を観た時の感動は大人になった今でも心の奥底に残ってる。
されども最近は、やっぱりハリポッター。
呪文の山だ。
その中で、有名なのが、守護神来たれ! の「エクスペクト・パトローナム」。
その上に、「アバダ・ケダブラ」、つまり息絶えよ!
……と唱えれば、世の中凄いことになる。
ちょっと恐ろしいので、ビビディ・バビディ・ブーくらいで充分かも知れないなあ。
ということで、【呪】という漢字より「祝」の方が好まれてるようだ。
44―4 【傘】
【傘】、雨がさが開いた形だとか。
確かにそのように見える。
しかし、ここで問題が。
雨がさの中に、「 人人
人人 」
なぜ4人の「人」が中に入っているのだろうか?
だいたい【傘】って、許容人数は2人まで、だよね。
そこで一説によると、それは傘の骨だとか。
えらい複雑な傘だと思うが……。
いやいや、それは雨が滴る様とか。
えっ、それって傘に穴が開いてるってこと?
とにかくなぜ4人なのか不明なのだ。
そんなややこしい議論があるためか、中国では【傘】から中に「ソ」を入れた文字、「伞」を使ってるようだ。
こちらの方がちょっとスッキリしてるかな。
そんな【傘】、香港で民主化運動の雨伞革命が起こってる。
この対応の仕方によっては、中国政府にとって、1989年の天安門事件以来の最大の打撃となる可能性がある。
民主主義と自由のために、香港の人たちに頑張ってもらいたいものだ。
こういった時の「かさ」は、中国の「ソ」入り文字ではなく、人が一杯集まってる【傘】の方が似合ってるのかも知れないなあ。
44―5 【税】
【税】、右部は農作物、左部は兄、つまり一人前の人からものを剥ぎ取る様を表しているとか。
そこから1年の収穫の穀物から一部を召し上げる意味となる。
聖徳太子は十七条の憲法を作った。
その十二に、天皇に代わり諸国を治める国司や国造は人々から【税】を取ってはならないとある。
国に二人の天子無し。民衆に二人の主君無し。
だから徴収できるのは天皇だけだと。
そして646年、大化の改新が始まった。
戸籍を作り、民に田を貸し与えた。
【税】は稲の収穫高の3~5%を納める祖(そ)。
庸(よう)は一定の布か一定期間の労働。
調(ちょう)は特産物を収めなければならなあった。
日本の【税】はこのあたりからきちっと仕組みが出来て、始まったようだ。それにしても結構重税だったような気がする。
そして現代、消費税は5%から8%に。次は10%へと。
しかし他国の消費税は?
デンマーク 25%
イタリア 21%
イギリス 17%
フィリピン 12%
韓国 10%
だから、どやねんということだが、とにかく上がって行くのだ。
いずれにしても【税】という字、人からものを剥ぎ取る様を表してる、からなのか、不満を伴う漢字なのだ。
44―6 【栗】
【栗】、枝の上に3個のくりの実をつけた形だとか。
なるほど、そういうことかと思うが、なかなかそのように見えてこないんですが。
そんな秋の味覚の【栗】。
その【栗】を使った渋皮煮というのがある。
渋皮?
そんなの渋くって食べたくないと思うが、渋皮にはタンニンや血糖値抑制効果があるポリフェノールが多く含まれ、美白に良い。
また茶渋の1.5倍の抗酸化作用があり、老化防止やガン予防効果があるとか。
だが重曹と、鬼皮を剥くため圧力釜が必要で、結構面倒くさそう。
昔、ずる賢い猿がいた。その猿におだてられた猫が囲炉裏の中の焼けた栗を拾い上げた。
しかし、その栗はまんまと猿に食べられてしまう。
そして猫は、やけどをしただけだった。
これはフランスの寓話であり、ここから「火中の栗を拾う」ということわざが生まれたそうな。
だから調子に乗って、【栗】の渋皮煮を作っても、鬼皮を剥く時にナイフで指を切ったり、出来上がってもどこまでも渋いとか。
こんな悪い予感がするので、料理するのは止めておこう。
棚からぼた餅、神棚から【栗】饅頭。
【栗】という字、どことなく巫山戯ていて、ポジティブになれない漢字なのだ。
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