第36章 音 以 進 寒 希 辛

36―1 【音】


 【音】は「言」と「一」の組み合わせ。

 「言」は神に祈る言葉であり、神がそれに反応した時、祝詞が入った器が夜中に微かな音をたてる。その響きを「一」として、【音】となったとか。


 なかなかややこしい話しだ。

 また明確な声は「言」であり、不明瞭な声が【音】とも言われてる。


 そんな【音】が、楽しくなったものが「音楽」と解釈しがちだが、この「楽」はむしろ「楽器」であり、要は「音楽」の意味は「楽器の音」のようだ。

 それでも――「音楽」


  ♪ ドはドーナツのド

    レはレモンのレ  ♪

 これはミュージカル・サウンド・オブ・ミュージックの「ドレミのうた」


  ドはディアーメスの鹿

  レは雫光り輝く太陽の

  ミは名前 自分を呼ぶ名前

  ファーはずっと遠く

  ソーは針と糸

  ラはソーの次

  ティ(シ)は紅茶のお供にジャムとパン


 これは「ドレミのうた」の原詩。ちょっと日本語では歌えない。

 これをペギー葉山さんはすべて食べ物にしようと考えた。


 だが、ミはミカンのミ、ファはファンタのファとしか思い浮かばない。

 それではと方針変更、夢があるように訳した。

  ♪ ミはみんなのミ ファはファイトのファ

    ソは青い空 ラはラッパのラ

    シは幸せよ さあ歌いましょう ♪


 この「ドレミファ」は、もともとイタリア語が語源で

  ド → 土   レ → 日   ミ → 水

  ファ→ 風   ソ → 太陽  ラ → 宇宙

  シ → 茶      だとか。


 いずれにしても【音】は神さまのささやき。

 そしてそれは――ドはドーナツのドから始まってるようだ。



36―2 【以】


 【以】、鋤の象形であり、音読みで(もって)と読む。


 2020年の東京オリンピック、そのキ-ワードは「おもてなし」。

 この「おもてなし」の語源は――『以て、成す』だ。

 ならば何を以て、成すのか?


  身を殺して 【以】て 仁を成す

  和を【以】て 貴しとなす

 こんな言葉があるが、いずれも『何を以て』が明確だ。


 2020年の東京オリンピック、具体的に何を【以】ての「おもてなし」なのだろうか?

 和の心を【以】て……?

 そんなの……和の心って、具体的に何? と日本人でもわからないと思うが。やっぱりここは快適さ、利便性、それとも一体感?

 何を以ての「おもてなし」? 見つからない。


 ならば、こんなのどうだろうか?

 おもろく、お得感を以て 東京オリンピックと成す

 うーん、バツバツバツ。

 大阪オリンピックならドンピシャだが……ね。


 いずれにしても、東京オリンピックのおもてなし、【以】てのほか──だけにならないことを願いたいものだ。



36―3 【進】


 【進】、「しんにゅう」の上の「隹」は鳥の形。鳥占いにより軍の進退を決め、進軍することを【進】と言うらしい。


 軍歌に「露営の歌」というのがある。

  ♪ 勝って来るぞと 勇ましく

    誓って国を 出たからにや

    手柄たてずに 死なれよか

   【進】軍ラッパ 聞く度に

    まぶたに浮かぶ 旗の波  ♪


 この【進】軍ラッパ、これが鳥占いであれば、やっぱり勝てないよなあ。ということで、敗戦。


 そして話しは変わるが、生物が種や属の段階を超えて変わることが「進化」、いわゆるカッコよく言えば、エボリューションだ。

 人類の証は直立二足歩行。

 どのように類人猿から人類へと進化したのだろうか?


 いろいろと説があるようだ。現在はかってのサバンナ説からアクア説が注目されているとか。

 サバンナ説

 類人猿は生きるために何らかの理由で二足歩行が必要になった。

 それをサバンナでやり、人類へと進化した。

 しかし、なぜ人は無毛なのか? ここがサバンナ説では説明できない。


 一方、アクア説──なんと、元々人は水棲動物。

 水の中で浮力で二足歩行を覚え、そのまま陸へ上がったとか。

 ホンマかいな? と思うが、決め手は……魚と一緒で体毛がない……ということらしい。

 うーん、とにかく言った者勝ちのようだ。


 そこで吾輩の新説を。

 それは本邦初公開の「エエカッコシー」説。

 オス類人猿がカッコ良く見せたくて、ウジャウジャの体毛を抜いて、背筋を伸ばして歩いた。これで目出度くガールフレンドをゲット。


 この成功体験が親から息子へと、そして孫へと受け継がれて行った。 

 そして気が付けば、それが1000回も繰り返され、いつの間にか体毛は退化し、二足歩行で歩いていた。


 どうだ、「エエカッコシー」説は、と言いたいが、どうも吾輩の脳、もっと【進】化させた方が良いようだ。



36―4 【寒】


 【寒】、上のウ冠を含めて三分割される。

 ウ冠は屋根、中段は草の意味。そして下部は氷。

 この組み合わせで、家の中で草を敷き詰めて、寒さを凌ぐ。そんな状態が「寒い」ということらしい。

 なるほど、【寒】とはそういう事態を言うのかと、納得。


 では、世界で一番寒い村はどこか?

 それはロシア東シベリアのオイミャコン、マイナス71.2度(ギネス認定)を記録した。

 約900人が住んでるらしいが、その極寒の中で、一体どんな暮らしをしているのだろうか?


 とはいっても、夏は夏で30度の暑さなのだ。その差、100度、冬は毛皮で夏は水着ってことかな?

 うーん、まことに忙しいことだろうなあ。


 こんなことを考えていたら、最近報道があった。南極で、マイナス93度が観測されたと。

 これが地球上で観測された最低気温だそうだ。それにしても一体どんな寒さだろうか?


 されども、絶対に我が財布より暖かいだろうなあ。



36―5 【希】


 【希】は象形文字。

 えっ、何の? となる。


 【希】は目を細かく織った布。隙間がなく、すなわちそんな布だから、「まれ」という意味にもなったとか。

 また反対に、【希】は麻のすかしぼりとも言われてる。

 見たこともないため、イメージがわかない。

 だが、とにかく織り目があらい。その目から「まれ」の意味になったそうな。


 まあ、それはそれとして、話しは変わるが、2013年9月14日、12年ぶりに新型の国産ロケットが打ち上げられ、そして成功した。

 名前はイプシロン (Ε)、2006年に廃止されたミュー(μ、M)シリーズの後継機であり、小型で低コストの固体燃料ロケットだ。まさに小さいが、未来への扉を開けてくれた。


 そんな──『 ε 』(イプシロン)、ギリシアアルファベットの第五字であり、零に近い数字を表す。

 そして、意外なことに、イプシロン(ε)、この漢字表記は──【希】だ。


 まさに【希】(まれ)なる合致だが、今回、宇宙へと飛び立ったイプシロンロケット、まさに希望の【希】の漢字がよく似合ってる。



36―6 【辛】


 【辛】、象形で、入れ墨をする時に使用する把手の付いた大きな針だとか。

 その時の痛みが【辛】だそうな。

 うーん、入れ墨はしたことがないので、【辛】がどんなものかわからない。だが、飛び上がるほど痛いのだろうなあ。


 だが、そんな【辛】、味覚となれば「からい」となる。

 そして辛いとなればやっぱり唐辛子。


 我々に馴染みのあるものは、ピザに乗ってる輪切りされた緑色のハラペーニョ。またタイ料理に欠かせない小粒なプリッキーヌ。

 そして、日本では鷹の爪。

 その辛み成分はカプサイシン。脂肪を燃焼させ、肥満防止に有用だとか。


 では、最も辛い唐辛子はなんだろうか?

 辛さの単位に「スコヴィル値」というのがある。

 これで評価すると

  タバスコ    2000

  ハラペーニョ  1万

  鷹の爪     5万

  ハバネロ    30万


 それでは世界で一番辛い唐辛子は?

 2012年、ニューメキシコ唐辛子会議で紹介された赤い丸形の……トリニダード・モルガ・スコーピオン。


 スコヴィル値はなんと200万。タバスコの1000倍、ハラペーニョの200倍辛い。

 このトリニダード・モルガ・スコーピオンを一口に食べた猛者がいるから驚きだ。


 いずれにしても【辛】、山椒は小粒でもぴりりと辛いが一番納得できるかな。


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