第33章 夏 噴 系 和 白 面
33―1 【夏】
【夏】は象形で、冠をつけ、両袖を振り、足を前に上げて舞う人の様だとか。
それは勢いがあり、季節の中で一番盛んな【夏】となったそうな。
そして代表的な夏野菜は――南瓜(カボチャ)。カロリーは米飯の1/2、ダイエットにもってこいだ。
また動脈硬化や癌を誘因する活性酸素、それを消去するβ-カロテン(β-carotene)がみかんの4倍、トマトの7倍も含まれていると言われている。
その上、しみ、そばかすも予防するし、冷え性、便秘にも効く。言うことなしの野菜だ。
そんなカボチャが夏に多く収穫されるが、旬は3、4ヶ月保存することにより糖分が増すため、秋から冬と言われている。
江戸時代、井原西鶴は浮世草子で書いた。
「とかく女の好むもの 芝居 浄瑠璃 芋蛸 南瓜」と。
(しばい じょうるり いもたこ なんきん)
現代女性は一体何を好むのだろうか?
ドラマ、イケメン、スイーツ、イチゴ、キャッシュ??
「芋蛸 南瓜」よりちょっとスマート。
それでも南瓜、現代女性に告ぐ。カボチャで【夏】を乗り越えよう!
33―2 【噴】
【噴】、(フン、ふく)と読み、右部の意味は花がいっせいに開く形だとか。それは中にある力が激しく、勢いよく外にふき出すことを意味する。
その一つが「噴火」。
2011年の3.11東日本大震災後、富士山が大噴火するのではと心配されている。
そして今回、産業技術総合研究所は「内部にひびが入ってると爆発的な噴火を起こしかねない、そんな状態だ」と分析結果を発表した。
富士山は寿命10万年の若い活火山だ。かっては100年に一度のペースで噴火を繰り返してきたとか。
しかし、直近の噴火は1707年の宝永噴火。関東一円は大きな被害を被り、横浜辺りで10センチの火山灰が積もったとか。
それからすでに300年の年月を経てしまった。そのため、大きなマグマ溜まりがあるとされている。
いつ噴火してもおかしくない状態だとか。
世界文化遺産となったと富士山、まさに噴火寸前だ。
登山で賑わってるようだが、やはり遠くから拝んでるのが一番だと思うが……。
とにかく【噴】、「噴火」だけは御免被りたい。
「噴水」くらいにしておいて欲しいものだ。
33―3 【系】
【系】は飾り糸が連なり垂れている象形だとか。そしてそこから「係」、これは飾り糸の「系」を人に懸けることにより「繋ぎ」とめることだそうな。
さらに「繋」は袋の中に入れたものをぶら下げる意味のようだ。
「万世一系」、永久に一つの系統、血筋が続くことであり、日本の天皇家は少なくとも6世紀には存在し、1500年以上は続いている。
しかし、普通の家庭はどうだろうか、その【系】はわからない。
だが、これが西洋となると少しましな気がする。なぜなら男なら父系、女なら母系の名が永遠に繋がっていくからだ。
例えば……エリカ ゴメス ジャクソン、名前と二つ苗字で構成されている。
エリカが名前、そしてゴメスが父親の苗字、ジャクソンが母親の苗字となっている。
これにより、結婚して名前を変えない条件で、男子は父親の姓を引き継ぎ、女子は母親の姓で繋がっていく仕組みになっているのだ。
少し分かりづらいため、日本名を使って検証してみよう。
ここに兄と妹がいた。
兄は……太郎 田中 佐藤
妹は……花子 田中 佐藤
兄(太郎 田中 佐藤)は……良子 鈴木 加藤と結婚した。
その長男(1)は……和夫 田中 加藤となる。
その長女(2)は……良子 田中 加藤となる。
妹(花子 田中 佐藤)は……幸夫 山田 斉藤と結婚した。
その長男(3)は……隆夫 山田 佐藤となる。
その長女(4)は……洋子 山田 佐藤となる。
もう一世代、例えば
長男(1)和夫 田中 加藤は……優子 小池 林田と結婚した。
その長男(5)は……一郎 田中 林田となる。
その長女(6)は……咲子 田中 林田となる。
長女(4)洋子 山田 佐藤は……幸夫 橋田 川崎と結婚した。
その長女(7)は……夕子 橋田 佐藤となる。
以上のように、いやいや、余計に分かりづらくなったが、とにかく男子は父系、女子は母系で繋がっていくのだ。
【系】という漢字、飾り糸だけに時には絡まり、こんがらがりながらということでご容赦を。
33―4 【和】
【和】、左の「禾」(カ)は軍門の標識の木の形であり、右の「口」は祝詞の入った器。
これにより軍門の前で誓約し、講和することだとか。
要は戦争を止め、平和な状態に戻すことを【和】ということらしい。ここから「和解」、「和睦」となる。
うーん、なるほど。
しかし、【和】に「泉」が付いて「和泉」。二文字でありながら、(いずみ)と読む。
なぜ?
これは奈良時代まで遡る。
地名は二文字にせよ、と政令が発せられた。これにより「泉」という場所は、日本、つまり和の国の【和】を単に前に付け足しただけ。
ああ、そういうことだったのかと、小学校時代の同級生の名前の謎が解け、納得。
そして【和】と「泉」が合体した当時、ブログでドロドロとした略奪恋愛を暴露した一人の女性歌人がいた。
それは和泉式部が綴った和泉式部日記だ。
夢よりもはかなき世の中を、嘆きわびつつ明かし暮らすほどに……、と始まる。
最初はただただ夫を待つ妻だった。それが歌が上手かったためかイケメンの皇子にアタックされ、やがて恋に落ちる。
まさに不倫の典型。
結果は夫からは絶縁され、父からは勘当されてしまう。
そして和泉式部はもう恋に生きるしかないと覚悟を決める。
だが、その皇子が不幸にも急死してしまう。そこへ現れたのがその弟。
和泉式部は謎めいた和歌でその皇子をまた落とす。後は愛人になる。
だが、それだけでは止まらなかった。お持ち帰りなどの狂恋の果てに、正妻を追い出した。そして、妻の座に座ってしまったのだ。
和泉式部は、こんなドロドロの恋の遍歴を日記に暴露した。
もちろん、これは当時一大スキャンダルに。
紫式部は「だらしない女」、菅原道真は「浮かれた女」と評した。
しかし、和泉式部は恋を貫いた。そして次の歌を残し、この世を去ったのだ。
「あらざらむ この世の外の 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな」
あの世へ行く思い出として、もう一度あなたに逢いたい、と。
いい加減にせんかい! とブログにコメントしたいが、それにしても【和】という漢字、「和解]や「なごむ」であるが、「泉」が付くと激しいものになるようだ。
33―5 【白】
【白】、白骨化した頭蓋骨の形だとか。そこから「しろい」の意味になった。
ワインには【白】と赤がある。魚料理に合う白ワインは白ブドウの果皮を原料とし、果汁のみを発酵させ作られる。
そして代表的な白ワインが――シャブリ(Chablis)。フランスのブルゴーニュ北部が産地。
しかし、カリフォルニアワインにもシャブリが多くある。これはフランスのシャブリがあまりにもブランドとして有名で……、産地偽装、いやパクリなのか?
まあ簡単に言えば、コシヒカリの世界版だ。
それでも米国駐在時、このカリフォルニア産シャブリをよく飲んだ。結構美味かったのを憶えてるのだが。
そして今でもカリフォルニアワインが好きで、ファンだ。
純粋の色は【白】、しかしこのように、ちょっと複雑な【白】もあるようだ。
そんな【白】、四字熟語に――「烏白馬角」(うはくばかく)がある。意味は、カラスの頭が白くなり、馬に角が生えること。まったくあり得ない意味のこと。
しかし、同じ【白】でも白ワインのカリフォルニア産シャブリ。これは充分あり得たことなのだ。
33―6 【面】
【面】は(メン、つら、おもて)で、目だけが表れている仮面の形だとか。
そう思って、【面】という字を眺めてみると、なるほど目がギョロッとしてるような……?
そんな【面】、「白」と引っ付き「面白い」となる。
【面】が「白く」て、なぜ「面白い」のだろうか? 不思議だ。
調べてみると、いろいろ説があるようだ。
いくつか紹介してみよう。
説1 楽しい時は目の前がぱっと明るくなり、
【面】(顔)が白く照らされたようになる。
この状態を「面白い」という。
説2 昔、人たちは火を囲んで楽しく談笑した。
顔が白く浮かび上がり、
その楽しい状態が「面が白い→おもしろい」と。
説3 友人とバカ話し。笑いすぎ、咳き込んだら、顔面蒼白に。
そこから「顔面蒼白→面が白い→おもしろい」となった。
説4 妻が真っ白に化粧し過ぎた。
それを見た夫、思わずプッと吹き出した。
「化粧→面が白過ぎ→おもしろい」となった。
そして本邦初公開、ここに吾輩の新説を。
なぜ【面】と「白」が引っ付き、「おもしろい」という意味になったのか?
新説 厚かましい部長が気に食わない。
宴会で酔いつぶしてやって、ヤツの面皮を剥いでやった。
そうしたら、その下から「白」(白骨化したドクロ)が表れた。
恐くってギョッとしたが、これって結構ゾクゾク、ワクワクした。
だから「面皮を剥ぐ、白→ゾクゾク、ワクワク→おもしろい」となった。
とにかく【面】、面白すぎる漢字なのだ。
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