間話4「首都で嗤う闇」
議会所の一室。
金髪の男は、最高級ユーフを飲みながら寛いでいた。
そこへ慌てた様子の首相が報告に入ってきた。
以前暴行を受けた怪我は既に完治していたが、やられた本人の前では、彼は恐怖を隠せない顔色だ。
「どうやら。仮面の集団が、壊滅したらしい……」
未だ記憶に新しいコロシアム襲撃事件。
この事件も仮面の集団と関係のあるものと考えられたが、しかし証拠が見つからなかった。
それから数週間が経ち。不思議なことに、仮面の集団の活動は一切止まっているようだった。
そこで、拠点と考えられる場所を総当たりで調査したところ――結果は、壊滅だったのである。
「ほう」
金髪の男は、さして興味もなく相槌を打った。そんなことはわかっているとでもいう様子だ。
一応形だけ促す。
「誰がやった」
「それが……。調査員の推測によれば。ユウ・ホシミが、たった一人で全部やったのではないかと……」
コロシアム襲撃事件の際も、彼が鬼神のごとき力をもって単独で襲撃犯を皆殺しにしてしまったという。
あの事件が彼の怒りを買ったとすれば、推測できないことではない。
「だろうな。予想通り、素敵なお土産を持ってきてくれたわけだ」
もっとも。自分がその気になれば、一瞬でカタが付く程度の相手でしかないが。
金髪の男は、内心独り言ちる。
「驚かないのか?」
問われ。
金髪の男はユーフを一口含み、ゆっくりと味わって飲み込んでから、頷いた。
「オレは感じていた。数週間ほど前、オーリル大森林において発生し、サークリスに移動したそれなりに大きな魔力をな。魔力値に換算すれば、最低でも百万以上は下らないだろう」
「百万以上!?」
魔力測定器が示す測定限界の、実に十倍以上。
人間兵器というレベルではない。もはや戦略兵器そのものだ。
首相が狼狽える。到底信じられることではなかった。
金髪の男は、にやりと口の端を上げる。
「これはいよいよ本物かもしれんな」
「馬鹿げている! そんな人間は、歴史上一人だっていやしない! 人間を遥かに超える龍の魔力値でさえ、最強の黒龍で三十万程度だぞ!」
対照的に、金髪の男は余裕の表情である。
「別に驚くほどのことではないさ。オレたちなら、このくらいは普通のことだ」
「貴様たちは、一体……」
「世界を超越する者、とでも言っておこうか」
金髪の男は、ふっと自嘲するように笑う。
「ユウ・ホシミをまたここに呼び寄せろ。召喚理由は事件の事情聴取でも何でも、適当に付ければいいだろう」
「それはできるが……どうしてまた」
「少々興味が湧いたのだ。ほんの挨拶でもしてやろうと思ってな」
「いつも裏で眺めているだけの貴様が……?」
「なに。ただの気まぐれだ。さあ行け」
金髪の男は人払いをする。
首相は苦虫を噛み潰したような顔で、すごすごと退出していった。
また一人になった彼は、ユーフの残りを胃に流し込む。
そして窓からサークリスの方角を眺め、不敵に嗤った。
「他のフェバルに会うのは久しぶりだ。果たしてどんな奴か。精々オレを楽しませてくれよ」
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