第16話 でかい家!僕も住みたいな!

しかしよく考えてみると、このちょっと大胆になる効果がある指輪は今の僕にはぴったりかもしれない。


緊張というものはつまるところ気が小さくなっている訳だ。であればちょっと大胆になるくらいが一番ちょうどいいのかもしれない。


どちらにしろ僕のことを考えてくれて、これを渡してくれたのだ、ありがたいことだ。


「ありがとうイザベラさん」


「いえ、これくらいのものしか渡せないのが心苦しいですわ」



して、話しているうちに、イザベラさんの家についた。


「――――でかいなぁ」


都会の一等地にあるにもかかわらず、非常に大きなお家だ。庭が広い、広すぎて敷地の移動は車が使われるらしい。どんな家だ。家というよりはもはや館という方がふさわしいだろう。もちろん僕らが今通っている学校ほど大きくはない。しかし学校とは違い、いち一族がこの大きさの家を構えることができるという点で恐ろしさを感じずにはいられない。さすが貴族というべきか。


「さあ、いきましょうか。」




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「ただいま帰りましたわ」


「お帰りなさいませ、お嬢様。そしてようこそ、男性の方」


「あ、お邪魔します」


「初めまして、私はカシェと申します。では、部屋までご案内いたします」


カシェさんはまさにメイドといった様相をしていた。もちろんいわゆるコンセプトカフェのようなふりっふりのミニスカメイドではない。スカートは長く、華美な装飾がない機能性を重視した給仕服だった。






「こちらでお待ちください。もうすぐで御当主様が到着なされなます」


カシェさんに案内された部屋は広いわけではないが、狭くもない。しかし壁にかかっている絵画や調度品、椅子から机に至るまで高級感が漂っている。

この椅子、僕座っていいのかな、指紋とかつけたら価値が下がらないか?


椅子に座ってイザベラさんのお母さんが来るのを待ちながら、車の中でした会話を思い出す。



「最後に一つ、お母様は家のことを第一に考える人ですわ、そこを念頭に入れておけば、いい印象を与えることができるかもしれませんわ」


「そっか、わかった、ありがとう。ちなみにイザベラさんはお母さんと仲いいの?」


「いい…とは言えませんわね」


「そうかい…」


ここで僕はなにも言えなかった。親子の関係というのは人それぞれだし、僕にはなにかそこに踏み込んだり、一言伝えたりする権利はないと思ったからだ。よそはよそ、うちはうちというやつだ。


そのやり取りを思い出して、横に座っているイザベラさんを横目に見ると、少々緊張しているようだった。それに対して僕はあまり緊張していなかった。以外とこの指輪の効果は侮れないのかもしれない。




「御当主様ご到着です」


ドア越しでもわかる存在感、そこに誰かいると思わせるぐらいの存在感にあてられたのは初めてだった。この指輪がなかったら緊張しすぎてなにもできなかったかもしれない。


その女性はその存在感とは裏腹に静かに扉を開けて入ってきた。


イザベラさんと瓜二つ、もちろん違いはあるが、スタイルや身長、顔貌に至るまでそっくりである。違うところと言えば、雰囲気であろうか?威圧感が半端ではない。そして驚くべきことが一つ、めっちゃ若い。やはりそこは吸血鬼だからだろうか、イザベラさんの姉として紹介されても、疑問一つもたないだろう。この人が、イザベラさんのお母さんか。



「初めまして、少年。私が、セヴェル・R・ステレルーチェだ。よろしく」


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