第62話 森の都 フラグルニルー
あれから2時間、僕らは車に揺られていた。
移動するにつれて、だんだんと建物は減り、自然が増えてきた。
「ずいぶん自然が増えてきましたね」
「うん、もうフラグルニルーも近いからね、ほら、見えてきたよ」
「おお・・・!」
ひと際目立つ二本の高い木の間を通り抜けると、まるで別世界だった。
先ほどの風景とは変わってみたこともないくらい太く、高い木々が立ち並んでいる。
その背の高い木の中にツリーハウスであろうか、個性的な家々が木の上に、または根元に建っている。
雨のためか、あたりに薄く霧が立ちこめており、その霧の中で灯る家々の光がとても幻想的だ。
ここが森の都 フラグルニルーか。
元の世界では見ることが出来ない光景なのではないか。
「すっげぇ」
「小学生並みの語彙力ね、恥ずかしくないのかしら」
車の窓に張り付いて外を見ている僕に対して、アムエルは呆れたように言った。
「ほっとけ、僕だってやろうと思えば、もっとイイ表現の一つや二つ・・・」
「あら、温泉の香りがしてきたわね」
「いや無視すな!」
「温泉の匂い?本当ですか?」
ノーシャは身を乗り出して、
僕の股間に顔を埋める。
「確かにかぐわしい香りですね」
「どこの匂いを嗅いでる!」
「股間ですが」
「なーにが『股間ですが』、だ!少しは悪びれろ!」
「悪びれろってすごい単語ですね、それ文法的にあってるんですか?」
「しらんわ!こら、さっさとどけ!」
僕らがわちゃわちゃしている様子をみてルグレット先輩はくつくつとかわいらしく笑った。
「にぎやかだね」
「あ、すみません」
「いやいや、いいと思うよ!静かで気まずい雰囲気よりよっぽどいいさ。それより、そろそろつくから、車から降りる準備をしておくんだよ」
「はーい」
それから車で移動すること数分後。
落ち着いた雰囲気のある、大きな平屋建てのお屋敷に着いた。見た目は旅館そっくりだ。
「さあ、ついたよ、実家だ」
「え、ご実家ですか?」
またでかい家だ。僕の知り合いは金持ちしかいないのか?
「そうだよ、私の家は旅館を営んでいてね、割と有名なんだよ。さぁ、手を」
先に車から降りたルグレット先輩はひざまずいて僕に手を差し伸べる。
相変わらず絵になる人だ。
「あ、ありがとうございます」
「さぁアムエルも」
そういってアムエル、ノーシャにも手を差し伸べた。
「紳士な人だなぁ」
「こういう人なのよ。だれにでも紳士的に振る舞う人なの」
「そうなのか」
随分立派な人だ、皮肉なしに。この余裕がない人が多いなかでもみんなに優しくできることは簡単なことではないだろう。僕もそうありたいものだ。
「さあ、こっちだよ。お母さーん、ただいまー!」
「お、お邪魔しまーす」
ルグレット先輩に連れられて、大きな玄関を通って旅館の中に入る。
「あらあら、お話は聞いてるわよ、いらっしゃ…い…」
「?」
廊下から姿を現わした、ルグレット先輩のお母様と思われる方が来た。
麻色の腰まで伸びたさらさらの髪、垂れ目がちな緑の瞳。マシュマロを彷彿とさせるムチムチゆるふわボディ。
そしてエルフ特有の長い耳!
そうそうこれこれ、こういうのでいいんだよ。
しかし普段はおっとりしていると思われるその目は、僕を見てからというものの驚愕の色に染まっていた。
それに気が付いた先輩がルグレット先輩のお母様に声をかける。
「お母さん?どうしたの」
「い、いえ、なんでもないわ。……お部屋に案内するわね」
ルグレット先輩のお母様が僕の顔を見て、すごい顔していたけれど……
なんだ?僕の顔になんかついてたりしたかなあ。
「ねぇアムエル、僕の顔になんかついてる?」
先輩の後に続いて廊下を歩いている最中、アムエルに聞いてみた。
「いえ?ついてないわよ。どうしたのかしら」
「いや、ほら先輩のお母さんが僕の顔みて戸惑ってたから…」
「ああ、あなたの顔が生理的にダメだったんじゃない?つい吐きそうになってしまうのを我慢していたとか」
「え、そんなことある?」
「私は好きよ、あなたの顔、一晩中舐め回すくらいには」
「ああ、ありがとう。…いやちょっと待って、一晩中なんだって?」
「一晩中舐め回すくらいには、ってノーシャがいっていたわ」
「ノーシャ!」
「いや、濡れ衣ですよ!」
「うふふ」
「いや笑ってないで否定してくださいよ!やってたのアムエルさんじゃないですか!」
「うふふふふ」
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