第45話 でかい風呂は掃除が大変そうだよね
二人でタクシーを使ってショッピングモールに行った。
かなり大型のモールで、この一つの施設で生活に必要なものはすべて手に入るらしい。
ここで、食品や家具等必要そうなものをいろいろ購入した。
「私、お手洗いに行ってくるわ、ここで待っていて頂戴」
「はーい」
ここで逃げることもできるだろう、すぐつかまるだろうけどね
この世界での男子と女子では力の差が大きいからなぁ
そうして待っていると、視界の端でぴょこぴょこ動く影があることに気が付く。
気になってふと見てみると。
「ノーシャ!」
「あ、お疲れ様です」
「あ、お疲れ様です、じゃねぇよ!いるなら助けてくれよ!こういう時のための護衛だろ!」
「いやあ、そうしたいのはやまやまなんですが、のっぴきならない事情がありまして」
「ほーん、雇い主のピンチさえも凌駕するのっぴきならない事情か、是非教えてくれよ」
「実はですね、私、派遣に登録してまして…」
「派遣?」
「はい、護衛派遣サービスです。もともとそこで働いていたんですね」
「おん、で?」
「その護衛派遣サービスを運営している会社の会長の娘なんですね、あの子。なのでちょっと手が出せないといいますか…」
「なーるほど」
やっぱりお嬢様だったわけだ。まあ、別荘のくだりで察すことはできていたが。
「でも、派遣なんだろ?他の会社が運営している派遣サービスに登録しなおせばいいじゃないか?」
「そういうわけにはいかないんですね、業界ナンバーワンで、ずっとそこで勤めているので給料がいいんです」
「給料か」
大事だな。
「さらに大手ということは、横のつながりもあるようで、邪魔をしたらこの業界で働けなくするぞと脅されまして…」
「そうか…」
「ほら、私今、いわば試用期間じゃないですか」
「そうだね」
「なのでも試用期間の後、お祈りだったら、ちょっと厳しいものがありまして」
ノーシャは僕の家で働きたいと言っていたが、僕はこの変態猫を見極めるためにとりあえずの試用期間を設けたのだ。
もしノーシャが僕を助けて、その派遣会社を首になり、業界を干されて(この表現が正しいのかわからないが)その後に僕の家でも働けなくなってしまったら。
なるほど、すぐには僕を助けられないわけだ。
別に他のバイトすればいいんじゃないかとは言わない。
今までやってきたことをやめて、新しい業界でやっていくというのはとても難しいことだ。
「いやね、今すぐ、正社員登用というか、しっかり雇っていただければ、今すぐ助けるのも、まぁ、やぶさかでないといいますか」
随分と遠回しなやつだな、でも助けてほしいのはやまやまだが、こいつ変態なんだよな。
この前も僕が入った後の風呂の水飲んでたしな…
本当に飲むやつがいるんだなぁって思ったよ。
浴槽のふちに手を置いて、顔面から風呂水がぶ飲みしてたからね。
それはもう幸せそうな顔をしていたよ。
まぁでもその変態性を、変態性にさえ目を瞑れば、いや実際に目を瞑ったらパンツの一枚でも盗まれてしまいそうだが。
変態でなければ、非常に有能な人物であるのだ。
今日昨日で僕の居場所を掴んでいる。
雇ってしまうか?
こうなる前に他の護衛を見て比較しておきたかったが、もうそんなことも言っていられる状況でもあるまい。
「あ、そろそろ、アムエルさん、戻ってきそうですね。じゃあ頑張ってください」
「え、ちょ、ちょっとまってよ!」
「大丈夫ですよ、ひどいことはされないと思いますよ」
そうして、音もなく、ノーシャは目の前から姿を消した。
「ノーシャ!待って!わかった、パンツ!パンツあげるから!多少のセクハラなら目をつむってあげるから!」
「あら、何を叫んでいるのかしら」
「君への愛だよ」
アムエルが戻ってきた。
「あら、素敵ね。次は私の前で言ってくれるとうれしいのだけれど」
「ちょっと恥ずかしいかも☆」
「人前で叫ぶことができるのに?」
「…」
「帰るわよ、私たちの愛の巣に」
「うっす…」
今回は自分の力で何とかするしかないようだ。
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