第35話 嫁さんができそう

羽?


見るとそこには、背中から羽を生やした女の子がいた。その姿はまさに天使がごとく。というよりも天使そのものだといっても過言ではないだろう。一部を除いて。というのも、天使にはなくてはならない、天使の輪っかがなかったのである。


「君は、天使なの?」


「ふふ、ちょっとナンパだとしても、セリフがくさすぎない?」


「はっ!いや、違うんだ!本当に!文字通りの意味で、天使なのかなって思ってさ!」


目を引くのは、羽だけではなく、その服装もとても目を引くものであった。


和装の、白のきれいな着物だった。


彼女の長い艶のある黒髪とのコントラストが非常に美しい。



君たちさぁ…制服って知ってる?

改造しすぎじゃない?


いいんだけどさぁ


僕も改造しようかなぁ

どうしよう、やっぱ昭和っぽく長い学ランにでもするか?それとも平成っぽくカラーシャツでも着てみるかね、いやでもそれは改造ではないか。


なんでもいいか。



「私はただの鳥獣人よ。まぁ勘違いするのもわかるわ、この羽だものね。あなたは噂の転校生でしょう。この世界に来たばかりだと聞くし、そういう偏見まみれの思考に至っても誰もなにも文句は言わないわ。ええ、言わないでしょうね、そもそも誰も指摘しないのではないのかしら、男の子だものね」


すっごい、火力が高い。僕のこと嫌いなの?


「でも、とってもきれいな羽だね!欲しいくらいだよ」


「は!?」


「ん?」


なにか変なこと言ったかな?


「あなた…なかなか大胆ね…」


「なにが?」


「なにがって…まぁいいわ、私はちゃんと察してあげるわよ。出会ってすぐだけど、私もあなたを一目見た時はかなりビビッときたの。そのプロポーズは受けてあげるわ」


「プロポーズ?」


「それより、私が持ってきた分のポスターがなくなってしまったから、少しわけてほしいのよね」


「ああ、はいはい、でも僕の分もちょっとあとちょっとしかないんだよね」


「ふん、男子は貧弱ね、一度にその程度の量しか持ってこれないなんて。きっとバッタの方があなたよりも強いんじゃない?」


な、なんだこの子。どうしてそんなに初対面の僕に向かってここまでのことが言えるんだ…


「でも好き」


「?????」


わけがわからないよ。


「ほら、貸して。動きが遅いんだから、ぼーっとしてないで、頭の方も弱いの?」


「え…え?」


「でもそこが好き」


「??????????」


飴と鞭?にしてはちょっと直球が過ぎないか?

なんか、鞭で打たれた後に、大き目の飴を上から顔面に向けて全力投球されている気分になる。


しかもそれを臆面なく、表情を一つ変えず、こちらをしっかりと見据えて言うものだから、うろたえている僕がまるでバカみたいじゃないか。


「あなた、バカじゃない」


「バカじゃないわ!」


「じゃあ頭悪い?」


「バカと一緒じゃないか!」


「頼りがいがないわね、でもそこが素敵」


「もう、やめてくれ、頭がおかしくなる…」


「うふふ、頭がおかしくなったって、安心して、私があなたの隣にいるわ…これからいつでも。もう私たち、じゃない」


「おっとっとーどっから手を付けて言いかわからなくなってきたぞー」


僕は考えることをやめた、とりあえず、一旦。



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