第34話 お芝居の始まり始まり。

二階のに着くと、なっがーーーい廊下の先に、ルグレット先輩がいた。


何度も思うが、この学校広いな。広すぎるのも考え物か。先輩は目を凝らしてようやく見えるといったところだ。


少々小走りで向かうとしよう。



「お、来たようだね。待ちくたびれたよ」


「お久しぶりです。先輩、僕が来るの知っていたんですか?」


「ああ、聖女さんが教えてくれたからね」


「…」


果たして、ルグレット先輩に僕が手伝いに来ることを教えたのはいつだろうか。

今さっき僕が手伝うことを決めて、ここに来るまでの時間で?はたまた、僕が生徒会室を訪れる前に、ということも考えられる。


まぁ考えたところで、なにがある、というわけでもないが。


「相変わらず、君は美しいね。いや、以前にも増して美しくなっている」


「はぁ、ありがとうございます…」


美しいと言われても、正直ピンとこない。イケメンとかかわいいだとかはまだわかるが、美しいって、普段の会話のなかでもあまり聞かない。

でも、褒められていることは間違いないので、素直に喜んでおこうと思う。


「決闘での活躍、聞いたよ。勝ったそうじゃないか、おめでとう。そんな君にこの花を贈ろう」


「…これは?」


「グラジオラス、勝利の花だよ」


「へぇ」


ルグレット先輩は、跪いて僕に花を差し出す。非常に芝居がかった動きであるが、ルグレット先輩自身が溜息が出るほどに人間離れした(エルフなので人間ではないのだが)美しさを持っているので、芝居臭さを全く感じさせない。


なんかお姫様になった気分!


「ふふっ、ありがとうございます」


こうして、まるで芝居のような動きで花をもらうと僕自身も芝居をしている役者になったような気分で笑いがこみ上げてくる。


「っ!その笑顔がまた美しい…!君の笑顔という花に向けて多くの虫が寄ってくるだろう…」


「あら、お上手」


おい、僕も変な返事をしてしまったじゃないか。


しかし、なかなかきれいな花だ。今貰ったところで花瓶とかはないので、胸ポケットに突っ込んでおく。


「で、僕は何をお手伝いすればいいのでしょうか?」


「うん、実はこの啓発ポスターを廊下に貼っていってほしいんだ」


「はい、もしかして、この量をすべてですか?」


「そうだよ、でもほら、この学校の廊下は長いから、このくらいでちょうどいい量なんだ」


「え、もしかして一人でやってるんですか!?」


「ははっ!まさか、そんなわけないだろう。もう一人、生徒会執行部の子に手伝ってもらっているよ。僕は下の階から、もう一人が、上の階からといった具合でね」


「なるほど」


「だから君は真ん中から上に向かってポスターを貼っていっておくれよ」


「わかりました!いってきます!」


「よろしく頼むよ」




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――――――――



「おっもいなぁ」


紙一枚では、それほどの重さではないが、やはりこの枚数があるとかなり重くなる。もちろん運べないほどでもないが、ポスターなので、紙自体が大きめで持ち運びにいくい。


「さて、始めるか」


ポスターの束を床に置いて、一枚ずつ、等間隔に貼っていく。


昔、学校でも似たようなことをやった覚えがある、掲示係だったか?あの頃は掲示がなんだかよくわからずにやっていたな。


いい感じのペースでポスターを貼っていくと、横目に人が見えた。僕がポスターを貼っていない方向にいる。何かを貼っているようだから、多分この子はもう一人の手伝ってくれている子だろう。上から貼ってきているようだが、もうここまで終わらせてきたのか。


僕も負けてはいられない、もうちょっと集中して早く作業を進めよう。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――



もう僕が持ってきた分のポスターは貼り終わってしまったな。

どれ、もう一人の子に頼んで、少々分けてもらおう。


と、その子の方向に動き出したところで、どうやら僕はとても集中していたらしい、なにか用があったのか、もうその子は僕のすぐ隣まで来ていたようだ。


果たして、すぐ隣にいた子、そして僕が突然動き出すとどうなるか。そう、ぶつかるのである。


「きゃ!」


「おっと!」


ぶつかった衝撃で、舞ってしまったのだろうか、視界の端に大き目のポスターと、美しいが見えた気がした。

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