第33話 聖女

神々しい見た目をした。人間の女性だった。

もはや本人が光を放っているのではないかと錯覚するぐらいには神々しかった。

スラリとした手足に、腰の位置は高く、きれいなクビレを描いている。

伏し目がちな目は金色で、目と同じ色をした金色の柔らかそうな髪の毛は腰を超えてもはや地面についてしまいそうなくらいには長い。


また修道服のように見える服を着ているから、その神々しさに拍車をかけているのかもしれない。


ん?修道服?ここ学校なんですが。


おおかた、制服を改造したのだろう。一体どうなっているんだこの学校は。僕はなんどでも言おう、自由な校風ってそういうことではないと思うのだが。


「こちらの方が、私に似合うと思いまして」


「さいですか」


お似合いですとも。



ラヴニール・ラ・プロフェテス。


生徒会執行部 生徒会長付特別相談役。


通称、聖女。


いわく、未来が見える。いわく、予言をしている。いわく、神の声が聞こえる。


その金色の双眸に映るのはなんであろうか。

この人の目、苦手だな。まるで目を合わせただけで、僕のことを見透かされている気分になる。



「えーと、決闘の際はありがとうございました。おかげ様で勝利することができました。こちらつまらないものですが…」


「まぁ!ありがとうございます」


聖女様は優雅にお土産を受け取った。


「では、僕はこれで…」


お世話になっておいて、お土産渡して、はいさようなら、なんて非常に失礼な話であるが、この人とはあまりお話していたくない。なーんか面倒事に巻き込まれてしまいそうな気がする。別に何をされたとかいうわけではないし、むしろお世話になったのだから、その態度はおかしいのだが。これが生理的に無理ってやつだろうか。


「お待ちください、少し、お話していきませんか?私、あなたに興味があるのです」


「…はい」


逃げることはできなかった。まぁなんだ、別に僕が苦手だというだけだ。むしろ仲良くなっておくほうがいい人物である。


「学校にはなれましたか?」


「はい、おかげ様で楽しくやっています」


「それはよかったです。我々生徒会は生徒が学校生活をよりよく過ごせるように日々努力していますから、男子生徒からもそういってもらえると自信になります」


「そうですか、それはよかったです」


「ええ、あなたも護衛を雇ったようですし、今後はめったなことは起きないでしょう」


「…護衛のこと言いましたっけ」


「私は聞こえるのですよ、神の声が。神がすべて教えてくれます」


「神、ですか」


正直、妄信は危険だと思う。この人は神が人を殴れといったらなにも疑うことなく殴るのだろうか、妄信はそんな犯罪にも猛進してしまう危険性がある。


「ところで、この後時間はありますか?お手伝いしてほしいことがあるのですが」


「ないことぐらいわかってるのではないですか?」


「私もなんでもわかるわけではないのですよ?神はなんでもかんでも教えていただけるわけではないのです」


「へえ」


「ちなみにお願いですが、ルグレットの手伝いをお願いしたいのです。結構な日数がたっているのに、連絡が返ってこないと悲しんでいましたから」


「あ」


忘れてた。あのエルフの王子様系女子、ルグレット先輩からもらった連絡先、登録したはいいものの、連絡をしていなかった。


「手伝ってくれるようですね、ルグレットは今、二階の廊下で作業をしていますから、そちらまでお願いします」


「はい、わかりました」


「あっ、そうそう」


「はい?」


「作業をする際は、ちゃんとことをおススメします」


「? ありがとうございます」


「いえ、ではお手伝いお願いしたします」


「はい、いってきます」


僕は扉を閉める際の、あの人の、聖女の満面の笑顔が妙に頭に残った。

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