第13話 結婚式には呼んでよ
「本当に申し訳ありません。責任をとって、婿に迎えますので、だ、大丈夫ですわ!私、実家がお金もちで!」
「いや、いいから!そんな婿とか!」
「いいえ!そういうわけにはいきませんわ!男子の肌を見てしまったのですよ!」
「落ち着け!とりあえず茶でものみなよ」
「飲みます!飲みますから!服を着てくださいまし!」
「おっと失礼、お見苦しいものを見せていたね」
「いえ!お見苦しいものだなんてそんな!食パン五枚はいけますわ!」
言われた通りに服を着る。しかし替えの服など持っていないので、濡れた服を再び着る。濡れた布が肌に張り付いて気持ち悪い。
僕が服を着ている間に、イザベラさんは律儀にお茶を飲んで自身を落ち着かせていたようだった。
しかし、話がややこしくなってしまったな、濡れた服をこのまま着ていても風邪をひいてしまうかもしれない。今日はこれ以上ややこしくなる前に、勉強会はお開きにしてとっとと帰ってしまおう。
「じゃあ、イザベルさん、今日は助かったよ。僕はもう帰るから、また明日」
そう言いながら、さっさと机の上に出していた教科書やら文房具やらをカバンの中に適当に詰めて、逃げるように教室を出ようとした。
「お待ちになって、まだ話は終わってませんわ」
イザベルさんは僕の腕をつかむ。
「私は、男性の肌を見てしまいました。貴族として、これは責任を取るべきだと思いますの」
見た感じこの子は貴族としての責務的ななにかもさることながら、男子の肌を見てしまったことに対して申し訳なさを感じているようだ。
「いや、だからそれはもういいって」
「いいえ、それはよくないのです」
「別に君が気に病むことなんて、なにもないと思うよ。そもそも服を脱いだのは僕だし、勝手に脱いだだけだし。それに、そんな慣習みたいなものはもう時代遅れだとは思わないかね。時代は自由恋愛さ!君は、ただラッキースケベだやったー!と思っていればいいのさ!」
長々と話しながら、イザベラさんの指を僕の腕から一本一本丁寧に外していく。
「しかし、それでは貴族として…」
「貴族がなんぼのもんじゃい!君はどうしたいんだね!っていうか、君がさっき自分でいってたじゃないか!貴族なんて形だけ、みたいなことをさ!君は君らしく生きればいいのさ!じゃ!」
「あ!お待ちになって!」
ついにイザベラさんの指をすべて外し終わった瞬間に、教室の出口へと走る。だいぶ適当なことを抜かした。はたから見たらかなり浅い、口だけ男みたいになっていたが、多分大丈夫だろ!明日にはいろいろとうやむやになってるさ!知らんけど。まぁ大体の問題は時間が解決してくれるっていうし、半年後くらいには笑い話になるだろう!
この選択を僕は、そのうち後悔することになる。いやすでにこの子の前で服を脱いでしまった時点でもう手遅れだったのかもしれない。
――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――
――――――――
「いってしまいましたわ…」
「お疲れ様でございます。お嬢様」
「カシェ…いつからそこにいましたの?」
イザベラの後ろには、メイド服を着た壮年の女性が立っていた。
「最初からここにいました。一連のことは見させていただきました」
「カシェ、申し訳ないのだけれど…」
「それは無理な願いです、お嬢様。お母様にはもうすでに連絡済みです」
「そう…そうですわよね」
イザベラは心の中で謝った、自身に非がないのにも関わらず。彼を貴族特有のごたごたに巻き込んでしまったことに対して。もし今日の勉強会が自分ではなく、他の人がやっていたら、勉強会を今日ではなく、別の日にやっていたら、いろいろな考えが浮かんできたが、それをしたところでもうすでに手遅れなのである。
別にイザベラ自身も本当に結婚する気はなかった。ただ誠意を見せるために結婚のことを口に出し、そのあと妥協として、相応のお金を渡す流れにしたかったのだが、その男子は逃げるように帰ってしまい、さらにその一連の流れを家の者に見られてしまっていた。
「大変なことになっていしまいましたわ」
イザベラは心の中で嘆いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます