第12話 勉強会

「本当に申し訳ありません。責任をとって、婿に迎えますので、だ、大丈夫ですわ!私、実家がお金もちで!」


「いや、いいから!そんな婿とか!」


「いいえ!そういうわけにはいきませんわ!男子の肌を見てしまったのですよ!」



どうしてこうなってしまったのか、これは放課後の勉強会がひと段落した時まで遡る。


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放課後、イザベラさんと勉強会をして(どこから出したのかわからない紅茶と茶菓子付きだ、うまい。)ひと段落したわけだが。その時点で僕は今日あった授業の内容の全てとまではいかなくても、ある程度の内容はわかるようになっていた。もちろん、歴史等の前の世界と全く内容が異なる教科はさておき、数学や物理などの法則はほぼ一緒で(実際一緒と言いきってしまえるほどに僕は理系の知識がるわけではないが)あったために学生時代に勉強したことを思い出してきたということもあり、勉強会はスムーズに進んだ。


イザベラさんの教え方もうまいものだと感じた。聞けば成績はかなり優秀な方であると自画自賛していた。自信家だなと思うと同時に今の世の中ではこれくらいの自己愛がある方が以外とうまくいくのかもしれない。


はてさて、イザベラさんのおかげで何とか次の日からの授業についていけそうな気がしてきた僕は、イザベラさんに対して恩義を感じていた。


「イザベラさん!ありがとう!これでなんとかなりそうだよ!」


「それはよかったですわ。またなにかあれば遠慮なく私を頼ってくださいまし」


「いやぁ助かるなあ、なんかお礼をしなきゃいけないね」


「いえ、お礼はいりませんわ。人を助けるのは貴族の務めでしてよ」


「貴族なんだ、初めてみた」


「ええ、まぁ貴族とは言っても、今はただの資産家、経営者ぐらいな認識になってますわね。もちろん、各方面に影響力はあったりしますけれども」


「そうなのか」


「あ、でも、そのペンも私の家の傘下の会社が作ったものですわね」


「え、これ?」


なんか本人は、大したことはないみたいなニュアンスを含めているが、僕の予想では実際のところはでかい財閥的な感じになっているのではないかと思う。絶対そうだ。でも、もしそうだとしたら、物によるお礼はしても意味はないかもしれない。そもそもお嬢様であるならば、市販で売っているものなんかよりもいいものを持っているだろうし、食べているだろう。


「そっか、でもそれはそれで僕はなにかしらお礼はしたいんだけど…」


それを聞いたイザベラさんは何かを思いつき、おずおずとした様子で僕に疑問を投げかけた。


「で、あれば男性であるあなたに聞きたいことがあるのですけれど」


「!もちろん!なんでも聞いてよ!」


それでどれくらいのお礼になるかわからないが、何か物をあげるよりもいいお礼にはなるかもしれない。


「男性のち〇ぽって光ると思うのですが…」


「ちょっとまてい」


なにをいっているんだこの子は、いや吸血鬼は。しかも言い方的にち〇こが光る前提で話しているじゃないか。


「ちなみにどんな風に?」


「七色にこう、バーッと」


わかった。これゲーミングち〇この話だ、ゲーミングち〇こ。今日の朝にも聞いたわ。ゲーミングち〇こ。なんだ、流行ってんのか?ゲーミングち〇こ。略してゲミチン。ゲミチンね。いやミンチンでもいいかもしれない。いやミンこか?なんでもいいか。


ここはひとつ、僕が男として、いや友達としてこの子の偏見を正してあげる必要がある。正してあげなければこの先の将来、恥をかいてしまうかもしれない。


「あんまり夢(?)をこわすようなことを言いたくけれど、君のためを思っていうよ、ち〇こは、ち〇こは実は光らないんだ」


「ええ!?ど、どういうことですの!?巷の噂はやはり嘘だということですの!?」


「どんな噂だよ!信じちゃだめだよ!」



しかし案外、男子と触れ合う機会がないからそんな噂でも信じてしまうのかもしれない。まるでツチノコのように。やはり男子は珍獣なのだろうか。いやでも朝の子たちはゲミチンをネタにしてたから、つまりこの子がピュアなのかな?心配だ。


「確かにち〇こは光らない、でも実は、たまに2本生えているやつがいる」


「ええ!本当ですの!」


「ああ、そんなわけないだろ」


心配だ、もしかしたら、なんでも信じちゃうんじゃないかこの子…


「実は、親が大変な病気でさ、お金が必要なんだ…」


「え!?それは大変ですわね!いくら必要ですの?」


「3000万ぐらいかな…」


「払いましょう」


「まだなにも頼んでない!」


この子やばすぎる。どうしてそんなにも人を簡単に信じることができるのだろうか。


「大丈夫ですわ!この世に、もうすでに遅い、なんてことはありませんわ!」


なんだこの子くっそ純粋だ。白い、白すぎる。本当にこの子は黒にも勝ててしまえそうな、濃い白だ。これが若さなのだろうか、おじさんにゃ厳しいね。


「白すぎて、日焼けしそう、くっそ眩しい」


「大変ですわ!カーテンを閉めませんと」


「いや、いいんだ、大丈夫だから」


「そうですか?では、3000万の話ですが、小切手でよろしくて?」


「いや、そっちも大丈夫だ、いま親から連絡が来て、完治したらしい」


「そうですの!よかったですわ!」


そもそもこの世界に僕の親はいないわけだが。心がいたい。マジでごめんね。

嘘をついてしまった気まずさを誤魔化すように、出されたお茶に手を伸ばして手に取り、お茶を飲もうとすると、手が滑ってしまい、盛大に中身をぶちまけてしまった。


「うわっと!」


「まぁ大変!今、タオルをお出ししますわ!」


「いや、それには及ばないよ」


僕は男子だし、そのまま服を乾かすために服を脱いで、上裸になる。


「お、お待ちになって!男子が!婿入り前に男子が女子の前で上裸になんて!」


「え?ああ、そうか」


そういえばここ貞操逆転世界だった。思ったよりみんな普通に接してくれるから忘れてたよ。


「本当に申し訳ありませんわ!男子の裸を見てしまうなんて!あ、安心してください!ちゃんと責任はとりますわ!」


「いや、いいって落ち着けって」


こうして冒頭に戻るわけだ。
















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