第11話 ジェネレーションギャップって3年とかの差でも起こるから、すごいよね
結局授業は全く分からなかった。そりゃそうだ、勉強したのなんて何年も前だ。浦島太郎はこんな気持ちだったのだろうか。まあ、僕の場合、年をとったのではなく、若返ったわけだけれども。しかしどちらの場合もジェネレーションギャップがあることは変わらないだろう。
どうしようか、塾にでも行くべきだろうか。
僕は机に突っ伏しながら、逡巡する。無駄に痩せているので机の角があばらに当たっていたい。
「もし、よろしいですか?」
「・・・?あ、は、っはい!」
一瞬自分のことだとは気づかなかった。
「もし授業の内容がわからなかったらようでしたら教えて差し上げてもよろしくてよ!」
「マ?」
輝くような白髪、日に当たる姿はまるで絹のようにつやつやと光を反射し、輝いてなびいている、この子の白い髪はきっと黒にだって勝てるだろうと思えてしまうほど。長さは腰まであるだろうか、しかしそこまで目線をやったところであることに気づく、縦ロールだ。毛先が縦ロールになってる。初めてみたなぁ。
すらっとしたスタイルのよさに加えて、非常に高飛車な目つきをして言う瞳の色は赤、何より特徴的なのは口角を挙げたところに見える鋭利な犬歯、と言いたいところだが、男としてはここに目が行ってしまった。おっ〇いである。
「いや、でっか」
でかいのである。
これはみんな見てしまうだろう。いや違うんだ。僕は今座っているから、ちょうど声をかけられた方を見上げると目の前が、おっ〇いなのだ、おっ〇い。だからこれは僕の意志ではなくて、不可抗力だからという無駄な言い訳をしてみた。
「あっ!これは失礼しましたわ!まずは自己紹介をするべきですわね、私はイザベラ・R・ステレルーチェと申しますわ」
「あ、どうぞよろしく」
なるほど、見事なお嬢様だ。よく見ると制服にところどころフリルが付いている。それがまたより一層彼女をお嬢様としているように見える。
しかし、フリルか。お姉ちゃんの昭和丈ヤンキースカートといい、ルグレット先輩の白い学ランといい、自由すぎないか、自由な校風ってそういうことじゃないと思うのだが。
「もちろん勉強以外にも、ここに来たばかりでしょうし、なんでも聞いてくださってよろしいですのよ」
「じゃあ、スリーサイズを…」
「上から101…」
「まてまてまて!ごめん僕が悪かった許してください!」
まさかノータイムで答えが返ってくるとは思わなかった。
上から101…上から101!? でっかいなぁ!
「ちなみにその犬歯についてなんだけど」
「犬歯?ああ、私、吸血鬼ですの」
「やっぱりそうか」
吸血鬼。ステレオタイプ通りであれば、聖水やらニンニクやら太陽の光に弱くて、人間の血を吸うあれだ。
なるほどそうか、僕と仲良くなって、血を吸うつもりだな?はっはーん、悪いけど僕の血はそこまで安くはないんでね。そう簡単には吸わせてあげるわけにはいかないなぁ。
「500mlで5000円でどう?」
「…何の話ですの?」
どうやら違うようだ。
「ニンニクは苦手?」
「いや、別に…」
「太陽の光はきつい?」
「いや、まぁそろそろきつくなってくる季節かもしれませんわね」
「聖水とかって…」
「たまに使いますわ、あれは美容にもいいんですの」
「ごはんとかって…」
「私はパン派ですわ」
…吸血鬼要素ゼロじゃないか!その犬歯は飾りか!?
「いきなりそんなに聞いてくるなんて、はっ!もしかして、一目惚れ、ですの?」
「違うが?」
「そんなこと言って本当は?」
「違うが?」
「と、口では言っていても心の中では?」
「違うが?」
「そんな素直になれない転入生、授業についていけない自分に話しかけてくれた美人な女の子に実は好意を?」
「抱いてないが?」
「好意を抱いて、行為を?」
「何をするつもりだ!?」
「放課後の勉強会ですわ」
「是非よろしくお願いします」
こうして放課後はこの吸血鬼ちゃんと勉強会をすることになった。
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