第5話 役所の匂いって割と好きなんだよね
そうして、警察に連れられてきたところは、ふつうに役所だった。こちらに来て生活をするには当たり前であるが、戸籍やら書類やらを書いて提出する必要がある。
ちなみに役所までは馬車や徒歩で来たのではなく、ふつうに車だ、普通自動車。まぁ普通自動車といっても男性を安全に運ぶために作られたいわゆる専用機らしい。重火器やでかい
まあ僕は麻袋に入っていたので、どんな外見をしていたかはよく見えなかった。残念である。
それよりも魔法だ!魔法あるって!外の景色や携帯とかから見たところ、科学技術も発展しているようだし、魔法とかはないのかなと思ったよ。
異世界といったら魔法は外せない大事な要素である。断言できる。魔法抜きの異世界など夏休みのない夏、いや、炭酸のないコーラである。
役所につくと、色々な書類を書いた。役所も大して元いた世界と変わったところはなかったが、唯一違ったところといえば、ステータス鑑定をする事ができたことである。これもまた異世界には欠かせないものだ。
ステータス確認のために出てきたのは、ボーリングの玉ぐらいの大きさの、玉だった。(また玉である)
しかしステータス確認といっても身長、体重といった基本的な情報や、総合的な戦闘力がわかる位で、いわゆるゲームのステータス画面のような、使える魔法や、技能、HPみたいなことがわかるわけではない。
手を置くと玉の上にホログラムのように映し出された。
気になる戦闘力は、
21
だった。
「いやー非常に弱いですね、まぁ男の人はこんなものですよ。」
僕は泣いた。
どうやらこの世界の平均戦闘力は100程度らしい。
最弱じゃないか、僕。
「ま、魔法とかって・・・」
「うーん、多分この戦闘力だと、魔力は非常に少ないと思うので、ちょっと厳しいかなと・・・」
泣いた、僕は。
心のなかで、さめざめと、泣いた。
そんな僕をおいて、机の中から書類を探しながら役所の職員のお姉さんは僕に向かって話し始めた。(ちなみにラミア娘さんだ、鋭い目つきが非常にクール)
「さて、16歳とのことですので学校に行くことをおすすめします。」
「ん?16歳?僕はもうすぐ三十路ですが?」
それを聞いたお姉さんは、書類を探す手を止めて吹き出して笑った。
「またまたぁ、冗談がお上手ですねぇ」
「いや、冗談ではないのですが」
「うーん、そう言われましても、まだ混乱していらっしゃるのかしら、ステータスには16歳と書いてありますし」
ここであいきゅー150の僕はとある可能性に気がついてしまった。
「すみません、お手洗いはどこに?」
「そこの角を曲がってすぐですよ」
「ありがとうございます」
僕は早歩きで角を曲がり、男子トイレに入る。もちろん目当ては小便器ではない。トイレにはついているであろうものを求めて、そう鏡である。
「あ、やっっぱり、若返ってる。めっちゃ16歳だこれ」
目の下にあった隈は消え、肌つやは良くなり、少々気になっていた薄毛気味の髪の毛も今やふっさふさである。しかもさらさら、ふっさふさらさらである。
「しかも微妙に顔がイケメンになっているな、これはちょっとうれしい」
しかし顔の造形が変わってしまったのは、少々寂しい気持ちもある。
「なるほど、これは若返ったのか、それともこちらの世界用に体が新しく作られたのか、どちらかだな」
多分後者であろう、先ほど気がついたが、なにも勉強していないのにも関わらず、この世界の文字も、言葉もわかる。体をこの世界のために調整しているといった転移特典というわけだ。それなら魔力もなんとかして欲しかったが、まあ贅沢はいうまい。もう諦めてる。
つまり生まれたてホヤホヤというよりも出来たてホヤホヤというわけだ。
だが玉も力がなく、転移させる力しかないとかいっていた割に、いろいろと調整してくれたようじゃないか、泥団子扱いはもうやめておこう。
しかし泥団子は、多くの人が子供のころに作ったことがあるのではないだろうか。その記憶に特別な感情がある人もいることだろう。そう考えると、たくさんの人の記憶に残っているという点で、そこまで悪い悪口ではないような気もしてくる。
ま、なんでもいいか。
「・・・・ついでに小便もしてくか」
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「いやあ、お待たせしました。すっきりしましたよ、色々と」
膀胱も、疑問も。
「それはよかったです。さて話を進めましょうか」
お姉さんは僕のセクハラ発言を受け流して話始めた。僕がトイレに行っている間に探していた書類や資料をそろえることができたようだ。机の上に学校のパンフレットのようなものが見える。
「先ほど私は学校に行くことをお勧めしました。」
「そうでしたね」
「なかでも私はこの『連立中央エガリテ学園』をお勧めします!」
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