第6話 君たちは学校生活やり直せるとしたら、何がしたい?

「中央...エガちゃん、なに?」


「連立中央エガリテ学園です。この大陸には多くの学校がありますが、この学校は様々な面で最高峰でありましょう!」


「ほうほう」


「いろんなことを学べるので、進路選択にもいいですよ。もちろん、先生も粒揃いです」


「ほう?」


「というのも、種族大戦終結後の平和を願ってできた学校ですから、先生も選りすぐりですからね!」


「ほーう」


「いろんな国や種族から寄付金もたくさんもらっているので、施設の出来もいいんですよ」


「ほーーん」


「しかもかなり自由な校風で、のびのびと勉強できますよ!」


「ほうほう」


「あと、私の母校でもあります!おすすめです!」


「ほう」


いや母校なんかい、しかし自分の母校をお勧めしたい気持ちもわからないでもない。ただそれができるのは学校生活が楽しかったやつだけである。もし学校生活が楽しくなかったり、いい思い出がなかったりする場合は、あの学校はやめとけと言ってしまうことだろう。


「ちなみに創立何年目なんですか」


「種族大戦後ですから、今年で300年目くらいですね」


相変わらずのスケールのでかさである。というかスルーしてたが、種族大戦ってなんぞ?しかし、ここで聞くほど僕はバカではない。話が長くなってしまう。もちろんとても気になる話ではあるが、もう字面から予測できそうなものである。たしかにこのラミアお姉さんとお話するのも悪くないが、さっき時計をみたら夜の9時だった。さすがに僕のせいで時間をこれ以上とるのは申し訳ない気持ちがある。なに、この世界にもスマホはある。あとで調べれば済む話だ。


しかし300年前の学校か、なんか古そうな学校だな。


「300年経ってるなら、なかなか古そうな学校なんですかね」


「古いのは歴史だけです。最近、老朽化に伴って学校全体を改修工事しましたからとってもきれいになりましたよ!」


「その改修工事は何年くらい前ですかね?」


これで100年前とかだったらなかなか笑えない。


「5年くらい前ですかね」


「安心する数字!」



ここでラミアお姉さんは身をずいと乗り出して興奮したように言う。


「もう一つおススメする点として他の学校に比べて男子の割合が高いです!」


「はあ男子ですか、いやそこまで興奮するとこなんですか」


「もちろんですよ!普通の学校は学年に一人いるかいないかです。しかし!この連立中央エガリテ学園!連立中央エガリテ学園はですね!クラスに1人から2人、在籍しています!」


大事なことなので二回言いましたって顔してる。かわいい。


「しかし男子の割合云々よりも、男子が少なくないですか?」


「ああ、言い忘れてましたね、この世界は実は男女比が1:10なんです」


「おっとっと、初耳だぞお」


玉、君は怠慢なやつだな。もはや怒りを通り越して呆れています。


「でも男女比が1:10なのであれば、もっと男子の人数が多くてもよさそうなものですが」


「そうですねぇ、男子はまあ弱い存在ですので、女子に嫌気がさして引きこもりになりがちというか、なんというか」


歯切れが悪いな。闇を感じるよ。大方、女子のアプローチが云々って感じだろう。そこから痴情のもつれで事件が起きたりといったところか。そもそもここは貞操逆転世界だ。女子は男子、男子は女子というわけだから。自分よりも強い存在に複数からアプローチされたら怖いかもしれない。よくわからないけど。僕もこれからわかるのだろうか。いやのだろうか。


「まぁわかりました、なんとなく。深くは聞きません。ところで一番相談したいことがあって」


「はい、なんでもどうぞ」


「僕、お金ないんですよね…」


そうなのだ、僕は生まれたてほやほや改め、出来立てほやほやで、こちらの世界に来たばかりだ。先立つものは何もない。


「それは問題ないです。この世界の男子は弱く、保護の対象になっていますので月に給付金が配布されます」


「マ?」


「はい」


「ちなみにどれくらい…」


「100万ほど」


「わーお」


なるほど、引きこもりになるわけだ。働く必要がないんだから。



「僕も引きこもりになりたいものですね」


「うーんそれはあまりお勧めしませんね、やっぱりこの世界に来たばかりだと、常識もしらないでしょうし、そういった常識を学ぶ意味でも、学校に行くべきかと思いますね」


「もちろん冗談ですよ、異世界ジョーク。確かに、常識は学んでおいたほうがよさそうですね、学校、行きましょう!」


「ではこの書類にサインを」


こうして僕はサインをして、晴れてまた学生からやり直すことになった。

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