第7話 でっかい学校!東〇ドーム何個分だろ?
それから数日後。
あの後はマンションを紹介してもらい、家具やら食器やら生活に必要なものを用意してもらった。
そして昨日制服が届いたので、晴れて今日、学校に登校することになった。ちなみに今住んでいるマンションから学校までは徒歩10分程度の位置にある。マンションから学校が見えるくらいには近い。これなら多分、遅刻はしないだろう。
「さて、学校にはついたものの、広すぎてどこになにがあるかわからないな」
今日は授業があるわけではなく、学校見学として学校を見て回ることになっている。まぁただでさえ広くていろいろな施設がある。一日で回りきれるとは思えないくらいにはでかい。学校を案内してくれるという人が本館前でまっているというが、その本館がどこにあるかわからない。
とりあえず正面のでっかい、いかにも本館ですよっていう顔をした建物に向かうことにした。
その建物の前に、人だかりがあった。いや人だかりというと語弊があるかもしれない。詳しく話すと、高い身長の女性と、その後ろに控えているように一列で女性たちが並んでいる。なにあれ、怖い。さすがにあれが案内してくれる人であるとは信じたくない。
しかしその後ろに佇む建物が本館かもしれない以上、近づかないわけにはいかない。
近づくにつれて、だんだんとその風貌が見えてきた。
いや、ヤンキーやんけ、こってこてのヤンキーだ。黒髪のウルフカット、目つきは鋭く、遠目でもわかっていたが、身長が高い、180cm以上はあるかもしれない。でも美人だ。モデルみたいだな。そしてここで萌えポイント、犬耳がついている!いいね、僕は犬派なんだ。
「お前が転入生の男だな」
「そうです、もしかしてあなたが…」
「そう!オレは連立中央エガリテ学園二年生!生徒会執行部副議長!ルーポ・フオーコだ!今日はよろしくな!」
「あ、はいどうもお世話になります」
やっぱめっちゃヤンキーだ怖。
っていうかどういうだよ!スカート長すぎだろ!昭和か!
しかしいやな予感が的中した。今日はこの人が学校を案内してくれるようだ。
「いろいろと
「さすが姉御!」
「かっこいい!」
「やはり姉御一択ですね」
いやこっわ、その「お世話」含みがありすぎませんかね?
「…なんか怯えてね?」
「そんなことねっすよ姉御!」
「そっすよ!きっと姉御のカッコよさに震えてるんすよ!」
「そうか?ならいいんだけどさ」
いえ、すっごい怯えてます。今すぐ回れ右して帰りたいくらいですはい。
「さて、おい、あれもってこい」
「はい姉御!」
後ろに控えていた舎弟たちが、巨大なコンクリートの塊をルーポさんの前に持ってきた。いったい何をするつもりなのだろうか。
「よし!見てろよ、男!」
「あ、はい」
「ふー、せいやあ!!」
直後、コンクリートの塊が砕けた。いや砕かれた。正直全く見えなかった。砕かれたコンクリートの先に振り下ろしたかのような手刀があったので、多分手刀で砕いたのだろう。
うーん恐ろしく早い手刀、僕は見逃したね。
あれが僕に向けられたらと思うと気が気ではない。
「…やっぱなんか怯えてないか?」
「そんなことねっすよ姉御!男はみんなああいう女っぷりでキュンとくるんでっせ!」
「そうなのか?」
「そうでっせ!少女漫画でみましたもん!」
「そうか、じゃあそうなんだろうな!そのためにこれをやったもんな!」
「やったかいがありやしたね!姉御!」
んなわけねえだろ。怖いわ!なんだあれ!ええい!この世界の人間は化け物か?!
「どうだ?キュンとしたか?」
その鋭い目線をこちらに向ける。
心がキュンとするよりも、心をギュッとされている気分だ。
「なぁ、やっぱ怯えてないか?」
「そんなことねっすよ!姉御!」
「狼の力を見て感動してるんすよ!」
狼だったのか、犬かと思った。
「おい!聞こえてんぞ!」
「あん?!狼だ!なめんな!」
「すみませんでしたごめんなさい許してくださいなんでもしますから(なんでもするとはいっていない)」
怒らせてしまったようだ。ずんずんとこちらに近づいてくる。
まずい、こ、殺される!ど、どうしよう!逃げるか?
いやここは貞操逆転世界!そしてここでは僕今、そこそこイケメン!今こそきゃわいい笑顔でぶりっ子スタイルで悩殺!
「えーオオカミさんだったんですかー?めっちゃかっこいいよかったですぅ」
めっちゃ噛んだ。慣れていないのがバレバレである。そもそも効くんだろうかこれ?
「はうぁ!」
「…かわいい」
効果は抜群のようだ。
「ぐう!…ハァ、ハァ…いいな、お前、男のくせに愛嬌あるし、素直でかわいいじゃないか、
そうしてニヤリと笑う。まるで獲物を前にした肉食獣のように、まるで絶対に逃がさないと言わんばかりに。
ぞわぁ
まずい、ここを早急に離れた方がいいと、自然を離れて久しく失われた本能が叫んでいる。まだ授業すら始まっていないのにこんな先輩に目を付けられるなんて冗談ではない。
「じゃ、じゃあ、僕はこのへんで」
「ちょっと待てやぁ」
逃げようと踵を返した僕の肩に手が添えられ、肩を組まれる。
いや速すぎだろ!まだそこそこ距離があったのに!あの距離を一瞬で?!
「お前、俺の弟にならねえか?」
「え?」
「だからよ、かっこよくて、強くて、生徒会執行部で、スタイルよくて、かっこよくて、ウルフカットで、仁義に熱くて、今お前の肩を組んでいるお姉ちゃんがほしくないかってきいてんだよ」
「いや、自分一人っ子なんで」
「姉弟になるのに血のつながりはいらねえよ」
「いやさすがにそれは」
「もしなってくれたらよ、この体好きにできるかもしれねえぞ」
そう言って、ルーポさんは自身の豊に実った胸を雑に揺らすように揉む。
おっほでっか!素晴らしい!スタイルだけは!しかし誘惑に負けたが最後、骨の髄までしゃぶりつくされてしまいそうだ。一時の欲で第二の人生、棒に振ることはない。
いや振るのは腰かナ?!
「いやしかし」
「ほしいよな」
「いやでも」
「ほしいよな」
「いや」
「ほしいよな」
「…ほしいです」
「はは!そうだよな!素直なのはいいことだ!これからよろしくな!弟!」
「…ウス、ルーポさん」
「あん?ルーポさんだぁ?お姉ちゃんと呼べ!」
「ウス!お姉ちゃん!」
「よし!」
この年になってお姉ちゃん呼びか。ちょっと恥ずかしいものがある。いや肉体は16歳だが、精神的には三十路に近いのだ。
「じゃあいこうぜ!当初の予定通り、学校を案内してやるよ!」
「ウス」
この先が思いやられる。願わくば、平穏な学生生活を。
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