第27話 愉快な猫さん

さて、これからどうしようか。オタン君には逃げられてしまったし。


「先生、どうしましょう?」


「ふん、まあ大丈夫だろう、決闘のルールはルールだ。少なくとも、あんな駄々が許されるわけがない」


「そうですか、まあそりゃそうか」


「弟ー!」


「お疲れ様ですわー!」


「お姉ちゃん!イザベラさん!」


「弟!お疲れ!いい動きだったじゃないか」


「後ろから蹴られていた時はどうなるかと思いましたわ」


「僕もあの時はヒヤッとしたよ」


「ケガはありませんの?」


「うん、先生に回復魔法をかけてもらったから」


「そうですの、よかったですわ」


「それよりごめんね、イザベラさん。あいつに謝罪をさせる前に逃げられちゃったよ」


「いえ、謝る必要はありませんわ!彼の駄々をこねる姿がとても滑稽で面白かったですもの!だいぶすっきりしましたわ!」


「そうかい、そりゃよかったよ」


イザベラさんもやっぱり溜まるものは溜まっていたようだ。


「それよりも、今日はもう家に帰って休んだほうがいいですわ!回復魔法で体の傷を治したとしても、精神の疲れは癒すことはできませんわ」


「うん、じゃあそうさせてもらおうかな」



そうしてお姉ちゃんとイザベラさんに別れを告げて、今日は家に帰ることにした。




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「お邪魔します」


「はぁーーーーー」


「長い溜息ですね、なんかあったんですか?」


「誰かさんのせいで、決闘終わりだというのに気が休まりそうもないんだよね」


「それは大変ですね。誰のせいなんでしょう?」


「お前だよ!」


家に帰る途中でこの決闘相手、猫獣人さんにつけられていることに気が付いた。気が付いたはいいものの、結局、僕が面倒を見ることに落ち着いてしまった。落ち着かされてしまった。


「ノーシャです」


「ノーシャね。今度からそう呼ぶよ」


「それにしても、汚い部屋ですね」


「ほっとけ、すべての男子の部屋がきれいだと思うなよ」


こいつが僕の部屋に入った初めての女性か、なんかなぁ。


「ここが、夢にまで見た男子の部屋…すぅーーはぁーーなかなか、かぐわしい素敵な香りですねぇ」


「嗅ぐな!」


「すぅーーーーーーーーーーーーーはぁーーーーーーーーーーーー♡」


「深呼吸なっが!肺活量すっごいな!」


「この、男性特有のかぐわしいかほりが体全体を巡って、浸透して、私の体の一部になるんですね。これもうセッ〇スでしょ」


「は?きっしょ」


「うーん、もはやこの吸った空気を吐き出すのももったいないですね」


「さすがに息しないと死ぬでしょ、え?もしかして死なないの」


あの身体能力だ、もしかしたらその可能性はあるかもしれない。なんか皮膚呼吸とかできそう。


「すぅーーーーーーーーーーーー」


そうしてノーシャは口をハムスターのように膨らませて、パンパンになったところで息を止めた。


「…」


「…」


何分息がもつか、みてやろ。


「…」


「…」


「ぐふっ」


あ、むせた。


「…」



「…」



だんだん顔が青くなってきた。すごい執念だ。そこは尊敬すべきかもしれない。って違う!見てわかるくらいに顔が青くなってるってだいぶヤバいんじゃなか?


「吐け!息をしろ!死ぬぞ!」


「―――――ぶはぁっ、はぁっ、はぁっ…ふぅー。死ぬかと思いました」


「…」


こいつあほでしょ。



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