第56話 なんか肝座ってんな、この状況は慣れないほうがいいと思うよ
あれは私が子供の頃の話。
私の家庭は母と私の二人で住んでいたわ~。
仲良く、母と娘の二人暮らし。
まぁ割と一般的な家庭よね。
「一般的かなぁ?」
「こっちでは割と一般的な家庭よ~、あなたは向こうから来たからわからないだろうけれど~。っていうか、邪魔しないでくれる~?殺すわよ」
「うい」
お父さんは、普通の人間よ~
普通の男。
もちろん、家にはいないわ~
お母さんはお父さんのことが好きで、会いたがっていたから、
お母さんはお父さんに貢ぐために仕事を死ぬほど頑張ったのよ~
「ん?お父さんに会うために貢ぐの?」
「そうよ~、男は基本貢がれた金でタワマンとか都心の一等地に家を建てて、そこで悠々自適の一人暮らしよ。不公平よね~」
でもお母さんがお父さんと会えることはなかったわ~
種族的な問題なのよね~
私の種族は目を向けただけで相手の記憶を覗くことができるの~
昔からこの特性のせいで、酷い迫害を受けてきたと聞いているわ~
もちろん、現代ではそんなことないけどね。
でも、私たちは割と扱いが難しい種族で、差別をしてくる人は現代でもいるわ~
で、私のお父さんもそのタイプの人だったの。
「なるほどね、だから僕がまだ誰にもいってないこととか、前の世界のことを知っていたわけだ」
「そういうことよ~」
話を戻すけれど、お父さんに会うために、お母さんは朝も昼も夜も、休むことなく死ぬほど働いたわ~
文字通り死んじゃったけど。
過労死よ。
死んじゃった。
死んじゃったの。
今は説明上、お父さんとか呼んでいたけれど、私はあんなのを父親だとは思わない。
あいつ、お母さんの葬式にも来なかったわ。
まぁ実際、私としては来てほしくなかったから、それでよかったのだけれど。
それでも書類の手続きは必要だったから、会いに行ったわ。
それで私に会って、あいつなんていったと思う?
清々したって。
殺そう。
殺してやろう。
…殺してやろうと思ったけれど、この世界には法律があるからね。
証拠も残っちゃうし、私が殺人で捕まったら先人たちが築き上げた私たちの種族の信頼を損ねてしまうから。
「築き上げた信頼?」
「なによ、歴史の授業でやったでしょ。覚えてないの?」
「あー………?」
「…勉強しなさい」
「うい」
「まったく呆れた、話が進まないじゃない」
「ところで、なんだけれどさ」
「なによ」
「口調が乱れてるよ」
「…もういいわよ」
「そう」
それでも、私は復讐がしたかったの。
だから探したわ、証拠が残らない方法。
で、なんやかんやあって
その方法を見つけたわ。
「なんやかんや?」
「そう、なんやかんやよ。そこは省略するわ。話が進まなくなる」
それは私の望んでいた復讐の方法だったわ。
もちろん、そう簡単にできる術ではなかったけどね。
一番の問題は術を発動するための触媒。
「健康な男子の肉体」
だったわ。
で、あなたに目を付けたの。その理由としては簡単よ。
あなたは守りが薄いから。
「一応護衛自体はいるんだけどね」
「ええ、でもその護衛、今の時間は家で家事中よね」
「まったくその通りです」
普通の男子はみんなセキュリティが高いのよ。
あなたもこれに懲りたら、新たに護衛を雇うことね。
ここから出れたらの話だけれど。
「というか、本当に他の男子も護衛がいるの?男子は見たことあるけれど、護衛自体は見たことないよ」
「男子の近くに控えていたりするわよ。普通の人は見えないけれど。そこは私の種族特性によるものね」
「ほう」
「壁に張り付いていたり、天井にくっついてたり」
「ええ?」
「3km先から対物ライフルを構えていたり」
「嘘つけ!」
「嘘よ」
「嘘かい!」
というわけで、あなたはこの状況に置かれているわけ。
「なるほどね、でも最初から僕を拉致しておけばイプノちゃんの願いは早くかなったんじゃない?なんで契約なんて遠回りな方法を…」
「私も鬼ではないわ。お互いにウィンウィンの方がいいじゃない。あなたはどんな願いでも叶う、私は男の体が手に入る。それなのに、あなた男のくせに随分と無欲なのね」
「死にたくなかっただけかな」
「あっそ」
でも、男自体に恨みはないのよ。彼に恨みがあるだけで。
男の中には、あなたみたいな優しい人もいるわ。
だから。
優しいから。
私のために死んで。
「え、いやです」
「拒否権はないわよ」
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